電車でマナー違反を機関銃のように指導するおばあちゃん
電車におばあちゃんが乗ってきた。
大きなガラガラを押して。
ガラガラで通路を確保して突き進んだ先は優先席だ。
通勤ラッシュの時間帯であり、車内は満員。
空席はひとつもない。
すると、優先席にさっきから座っていた若い娘にむかって
「ほらあんた、変わって」
娘が一瞬ひるんでいると、となりにいたおじさんが席を立った。
それを制して「いいのよ、あなたじゃないの。あんたよ」
そう言って、娘の左となりに座ったおばあちゃん。
「あなた、ここは優先席だから、あなたのような若い人が座っちゃいけないことは、わかるわよね。ほら、あぁしておじさまの方がいいマナーよ」
と説教。次の駅まで続いていたからおよそ2分間。
娘は時折「はい」と答えながら神妙に聞いている。
周囲に同情の空気が流れ始めた。その時だ。
おばあちゃん、向かい側に座っている若い男にむかって
「あなた、それやめて、ここは優先席よ、電車は混んでいるでしょ」
今度はスマホである。
「最近はみなマナーが悪いんだから、自己チューっていうのかしら」
満員で人が立っているというのに、それを縫ってよく見えるものだ。
すると、おばあちゃんの左に居た男もスマホ中
「あら、あなたもよ。やめて」
しかし男はスマホ操作をつづけている。
「やめないの?」
くいさがるおばあちゃん。
「いや、いま保存してるから」
ゲームの最中だったのだろう。
ゲームをしたことがないが、仕掛かりのデータをセーブしたい気持ちはよくわかる。
さらにそこらにいた、スマホ中の男女に次々に
「あなたも」
「ほら、あなたも」
やめない男には手を伸ばして袖を引っ張っている。
「今日はこれくらいにしといたろ」
吉本の芸人ならば、そこでオチがつくのだが、おばあちゃんは停まらない。
最寄り駅がきて、僕は電車を降りた。
最近は「すみません」と声をかけて降りることにしている。
スマホ操作中の男女は、大地に根を張ったように動かない。
それが、出入り口の正面であってもだ。
最寄り駅に着いて、降りようとすると、スマホ男、スマホ女が樹齢3,000年の楠のように、堂々と立ちはだかっている。
降りる人たちは大樹の左右をすり抜けて行く。
腕に当たると、ちっと舌打ちする「すずめスマホ男」もいる。
「すみません」と言うようにしたのは、ある人が最近「電車を降りる時、声をかけずに突き飛ばしていくやつが許せん」と言っているのを仄聞したからだ。
それは、大人げない発言だ。
ものごとを片側からしか見ていない。
だが、そういう風に思っているのだったら、ひと声かけた方が世界は丸く収まる。
こちらが丸ければ、それは以心伝心、いずれ世の中の多くの人に伝わっていくだろう。
欧米の満員電車がどうだかは知らないが、八百万の神が集う国、ここ日本ではそうなると信じている。
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