失った58,000枚のカツカレー
「明日はカツカレーにするよ」
と言われたことはないが、もしもそう予告されたならば、その日一日はバラ色の気分になることだろう。
上司に評価されず、部下には見下され、電車に乗れば靴を踏まれる。
そんな何の望みもないような一日が待っていたとしてもだ。
ビフテキともすき焼きとも違う。
カツカレーには、夢と希望が膨らむ何かがある。
それは、カツカレーが家庭ではなかなか出ないメニューだということもある。
「カレー」は比較的、手間暇のかからない献立だが、それでも一定の労力がかかる。
「とんかつ」はというと、主婦に最も嫌われる揚げ物。
油の管理が面倒だし、パン粉を付けるところからやると、その什器を維持することも面倒だ。
カツカレーは2食分の手間暇がかかる。
だから、円満な家庭において、お父さんがとんかつ大好きという条件が揃ったとしても、希な献立である。
これに匹敵する台詞は「明日はオムライスよ」くらいだろうか。
カツカレーは、カレーにとんかつを乗せる献立。
1948年のある日、所は銀座「煉瓦亭」の3軒となりの洋食店「スイス」
巨人の千葉茂が「とんかつとカレーを別々に頼むのは面倒だ」と言って、店主にカレーにとんかつを乗せるように求めた。
店主がそれに応じたことで生まれたメニューである。
スイスではカツカレー(並)を「カツカレー」カツカレー(上)を「千葉さんのカツカレー」(写真)として提供している。
家庭でなかなか食べられないから、お店で食べる。
カツカレーは値段、カロリー共に高い。
昼食代に糸目は付けないという、選ばれしサラリーマンであっても、太って無能呼ばわりされるのは敵わない。
外で食べる場合でも、カツカレーはここぞという時のとっておきメニューである。
そんなお店で食べる分厚いカツが冷凍食品で売られている。
しかも安い。
そうくれば、愛情が薄れかけたお母さんも、たまにはカツカレーでもしてやるかと重い腰をあげようと言うものだ。
買う人がいるから、売る人が居る。
売る人が居るから、廃棄せずに横流しする人が居る。
それが、CoCo壱番屋廃棄カツ転売事案である。
売る人がいるのも、買う人がいるのも驚かない。
その数は何万人でも。
ただ驚くのは、過去2年間でCoCo壱番屋が廃棄依頼したカツが58,000枚という「数」だ。
廃棄するために作っているというわけではないだろう。
消費期限が迫るから廃棄するのだ。
CoCo壱番屋が店頭販売する「カツ」に占める廃棄ロス率がわからないが、生産計画がずさん過ぎはしないか?
そう考えた。
コンビニ弁当の廃棄ロス率が15%程度と言われている。
それを当てはめるとCoCo壱番屋は2年で「386万カツ」
1年あたり「193万カツ」を売っていることになる。
店舗数で割ると、1店あたり1年間で「1484カツ」
この数字では実態より少なそうだ。
「ビーフカツ」「ロースカツ」「チキンカツ」「メンチカツ」
これら廃棄カツ4種の合計は、実際にはもっと売れているだろう。
従って、実際の廃棄ロス率は10%を切っているものと推察する。
その数値ならば、適正な経営努力だ。
創業者である宗次徳二さんの著書によると、毎朝出社すると(CoCo壱番屋のテーブルに置いてある)アンケートハガキ(およそ700枚)すべてに目を通し、顧客の声を現場におろしていたという。
その経営姿勢を信頼している。
創業者である宗次徳二さんの著書によると、毎朝出社すると(CoCo壱番屋のテーブルに置いてある)アンケートハガキ(およそ700枚)すべてに目を通し、顧客の声を現場におろしていたという。
その経営姿勢を信頼している。
ただ率直な感想として、報道されている「廃棄カツ」の写真を見て、実にもったいないと思う。
きっと、揚げたてをカレーに乗っけたら、おいしいに違いない。
冷凍食品を買う習慣はないが、もしも僕が主婦だったら、その安さとボリュームに接して、カゴに入れていたかも知れない。
「明日はカツカレーにするよ」
人は誰でも、誰かの喜ぶ顔が見たい。
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