退院ブルー
手術後11日め
7:30起床
ここにいる間は「安全」が保証されていた。
会社に行って上司や同僚との人間関係に悩む必要もない。
清潔、適温、何よりホスピタリティ
できれば、いつでも、こんなに特別扱いを受けたい。
快適な非日常。それを手放すことで浮かない気持ちになっている。
最終日の日勤は、初日に献立の希望を聞きに来た癒し系ルックスと物腰の深田さん。
「今日退院なので会計とかお薬とかお渡ししていきますね」
早速荷物の整理にとりかかろうとすると、深田さんが処置灯を点けてくれた。
あかるっ!
これまで2週間、暗いのは仕方ないのだろうと思っていたのに。
10:10
薬剤師が来て薬の説明
10:15
クラークが会計伝票を持ってきた。
彼女が出て行くと、すぐに封筒から取り出して金額を見る。
カード支払なのでドキドキはしていなかったが、初めての手術入院なので、その金額を見ても高いのか安いのかわからない。
差額ベッド代はどうなったのだろう。
差額ベッド代は患者本人が個室等への入室を希望しない限り生じないと法律で決められている。
今回、大部屋を希望していたが、空きが無くやむを得ず4人部屋となった。
病院側都合であるから、原則として料金はかからないはずだが、確認はあとでゆっくりすればいい。
分刻みで来客がつづく。
つづいて床頭台を拭きに来たおばさん
既に普段着に着替えた僕をみて
「退院ですか?おめでとうございます」
10:30
深田さんが、この次の外来の予約票、退院後の薬を持ってきた。
お昼ご飯は出るのですか?
自分が何時までここに居ると予定されているのかわからないので尋ねた。
「もう会計切っているので、お昼は出ないと思いますよ」
確かにそうだ。
病院の食事は、今朝の食パンとオムレツが最後になった。
11:00
「どうですかぁ?」
眼を細めてにっこり笑う深田さんが準備具合を確認に来る。
顔は優しいが、内心は早く出てって欲しいのかも知れない。
二人であたりをチェックして、忘れ物がないことを確かめる。
「じゃ、行きましょう」と部屋を出る。
「お持ちします」と10kgはありそうな荷物を持とうとする彼女。
いやいや、じゃこちらをとセカンドバッグを渡す。
ナースセンターの前で深田さんが看護師に向かって「千葉さん 退院されます!」と声をかける。
彼女が言うと、そこが秋葉原で、決まり文句の「行ってらっしゃいませご主人様」を言われているようだなと考えたが、不謹慎なのですぐに封印して、深々とお辞儀する。
ナースセンターに居た皆さんは、お座なりに「お大事に~」と応えてくれた。
彼女はエレベーターホールまで見送ってくれた。
エレベーターが来るまでのひととき
彼女が言う
「晴れてよかったですね」
特に話すことはない。
最後に僕はこう言った。
「すいません、荷物を・・」
10kgはある入院荷物を持って傘はさせない。
雨降りならば、駅までタクシーを使うつもりだったが「くもり」
時々、手を持ち替え肩を脱臼するんじゃないかと心配しているうち、病院は見えなくなった。
脳腫瘍の手術をしました。
という言い方は、ものごとを重大に見せかけたい時に好適だが、重病人扱いされるリスクが伴う。
仕事の取引先や人事権を持つ上役にいう時は病名で言う。
下垂体腺腫の手術をしました
これが正確な言い方
これならば聞いた人は、深刻なものか判断がつきかねて「大丈夫なの?」と聞き返してくる。
そこで「もう大丈夫です」と言えば、重病人扱いされて仕事を外されるようなことはない。
おわり
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