元春 タコ踊り カットアウト
コンサートで前の席が空席だと「可愛そうに、急な仕事が入ったのかな」と一瞬思うことはあるが、やはり見通しのよさに得をした気分を禁じ得ない。
新幹線で二人掛けの窓際「E席」の切符をとって「D席」に誰も乗って来なかった時もそう思うが、コンサートの場合、視界の良さはチケット代の対価として生命線であり、重要だ。
そしてこの日「佐野元春35周年アニバーサリーツアー」
ライブが始まって10曲が過ぎた頃から、視界に障害物が入るのが気になり始めた。
それは手であったり、激しい謎の動きだ。
僕の前には身長155cmほどの女性
ステージにいる元春との視線を遮らない。
床の傾斜がきついこともあり、前方の見通しは抜群。
その右側には170cmほどの男性
二人はアベックで、ときどき腰を抱いて寄り添っている。
170cmほどの男性というのは、日常においてはごく平均的で特に迷惑な存在ではないが、コンサート会場で、その後ろが背の低い女性の場合、話が違ってくる。
さっきから僕の右側にいる女性が、その男性を避けるように、どんどん僕の方へと寄って来ているのだ。
僕は面識のない女性に近寄られて歓迎するほど、もう若くない。
「ボヘミアングレイブヤード」で再び立ち上がったファンを尻目に、僕はそのまま座って休ませてもらっている。
そこで僕は、さっきから気になっていたその動きを明確にとらえた。
タコ踊りだ
ビートに合わせて身体を揺らすというのとは違う
「女元春?」
そう、元春になり切ってアクションしている
元春の仕草を真似る
時にはファンとして「そうだ、いいぞ」とサインを送る
リズム感が悪かろうが、一般的な人ならば自分の家で家族の見ていない個室でしかしない動きをしようが、知ったことではない。
ライブに来て思い思いに音楽に没頭する
誰も、元春ライブでタコ踊りは禁止されない。
でもそれは自分の席において、周囲に迷惑のない範囲という限定がつく。
ステージの元春よりも、視界を遮る「タコ踊り」が気になって、ライブに熱中できなくなってしまった。
これまでにも前方の席でタコ踊りしているファンを見たことはあるが、真横でときどき身体をぶつけながらというのは想定していなかった。
ライブ後のオフで、仲間が「motoさん、たぶん気になっているだろうなと思っていました」と労ってくれたのが救いだ。
「レインボーインマイソウル」
「誰かが君のドアを叩いてる」
「ヤングフォーエバー」
「星の下路の上」
「世界は慈悲を待っている」
「ジャスミンガール」
1990年代、2000年代の元春クラシック
そしてクライマックスの1980年代へと入って行く。
「ヤングブラッズ」
「約束の橋」
「SOME DAY」
「ロックンロールナイト」
「ニューエイジ」
「アンジェリーナ」
代表的クラシックでは「ガラスのジェネレーション」がないくらいで、ほぼ全年代つまり、1980年代から遠ざかっていたファン、1990年代のピーク時についていたファン、少ないと思うけれど2000年代以降にスタートしたファン。
その誰もが楽しめる選曲だ。
アンコール1
「スターダストキッズ」
「ダウンタウンボーイ」
アンコール2
「グッドバイから始めよう」
「国のための準備」
「悲しきレディオ」
今回の演奏を総じて絶賛に値するのは、ファンのための演奏に徹していたということだ。
ほぼすべての曲が鋭いカットアウトで終わる。
かつて「彼女はデリケート」をフェイドアウトで作っていた元春は、大瀧詠一に「ロックンロールはカットアウトだよ」と言われ、作り直されたという。
歌い終わるとすぐに演奏をカットアウトして、次の演奏へ。
まるでカラオケボックスの「演奏中止」ボタンを誰かが押しているかのようだ。
1つの曲を引っ張らないから、曲数が増えて全36曲。
練習する方は大変だが、お金を払ってチケットを買い、戻ってきた寒波に震えながら東京国際フォーラムに集まったファンの心は温かい。
僕らは東京国際フォーラムを後にして、スピーカーからずっと佐野元春が鳴動する店で旧交を温めた。
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