黒いから会社で履けると、トータルマックスに吸い寄せられる
1995年から1997年にかけて、いわゆる「エアマックスブーム」が絶頂期を迎えていた。
売れていたのはエアマックスだけではない。
ナイキは次から次に、誰も見たことがないような斬新な靴を世に送り出していた。
世はまさに「ナイキブーム」
ナイキという名前が付くだけで何でも売れるのではないか?
なんだったら、絹ごし豆腐にスウッシュ(ナイキのロゴ)をあしらって「ナイキエア豆腐」として出したら、ファンが爆買いするのでは?
そんなことさえ、思うほどナイキの勢いはすさまじかった。
そのブームを牽引した靴は「イエローグラデ」
AIR MAX95のファーストカラーで、アッパーがイエローからグレーにグラデーションする美しいデザインだ。
あまりに手に入らないため、この靴を履いている人の靴を脱がせて奪う「エアマックス狩り」という言葉もできたほどだ。
そして、もう一つナイキ製品への渇望をかき立てていた靴があった。
それが「TOTAL MAX SC」いわゆるトータルマックスである。
SCというのは「スポーツクラシック」の略で、ナイキでは過去モデルを色違いで復刻する時に用いるコードネームである。
エアマックスというのは、ナイキのランニングカテゴリーのトップモデル。
1990年頃から、1年に1度モデルチェンジされるようになった。
モデル名称はAIR MAXだが、コレクター雑誌ではそこに西暦年号が冠されて「エアマックス95」のように呼ばれる。
1996年
1995年に発売された「エアマックス95」の展開は既に終わり、ティアドロップスデザインのエアマックス96(96は一度も復刻されていない)が市場には展開されていた。
その年の10月に発売されたのが「TOTAL MAX SC」
その後、現代に至るまで数多く復刻されてきた「エアマックス95」SCの第1号である。
アッパーはオールレザー。
カラーはアッパーからソールまでオールブラック。
当時、こうした仕様の靴は他になく、ファンは発売の噂を聞きつける度に、開店に並んだのだった。
1997年初頭、ようやく初めてのスポーツシューズ「AIR NOMO MAX」を手にした僕は「Boon」に掲載される、並行輸入店の広告でこの靴を知ることになる。
価格はいずれも4万円~58,000。
(ナイキの正規販売店の正価は15,000円)
今ならば、ナイキショップまたは、正規販売店に絞り込んで張っていれば、正価で買えるということを知っているが、当時は靴業界(ナイキ業界)の慣例がわからない。
「並行輸入」という言葉を知ったのも、まだ後のことだ。
並行輸入とは、正規代理店以外の店による輸入。
ナイキ、アディダス、リーボックなど外国のスポーツメーカーはいずれも「**JAPAN」という日本法人を置いているから、本来「ヤナセ」のような正規輸入代理店のようなものは存在しない。
靴業界における「並行輸入」とは、すなわち、海外の靴屋から買い付けてきて割高な値段「プレ値」で売ることを指していた。
中には、同じ名古屋市内のナイキ直営店で、エアマックス発売日に店の前にトラックを横付けして、根こそぎ買って「仕入れ」それを「プレ値」で売るという「国内並行輸入」の店もあった。
自分は世の中の「ブーム」に乗っかるほど軽薄ではない。
「NOMO MAX」はダイエットのための散歩用という大義名分で、自分を納得させた。
だから、靴は1足あれば十分だ。
そんな誓いが、TOTAL MAX SCの画像を見て揺らいでいる。
いや、この靴ならば真っ黒だから、会社に履いていけるな。
営業にとって靴は消耗品だ。
走るための靴だから、健康にいいはず・・
「靴は2足でやめておけばいい」
もう止まらない
つづく
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