企業には知られていないルールが多すぎて、それで切れる人が少なくない
岐阜の温泉でえらい目に遭って以来、佐藤さんは扇風機の風が苦手になった。
ほんの少し当たるだけならばよいのだが、数分間にわたり風を受け続けると、動悸が激しくなってきて、とてもその風に耐えられなくなる。
だが、幸いなことにと言うか、当然というか彼の家には扇風機はない。
会社にも、そして彼が通う地下鉄桜通線にも扇風機はない。
あるのはエアコンだけだ。
だから「扇風機恐怖症」が彼に何らかの実害を突きつけると言うことは皆無だった。
佐藤さんの会社ではビル管理会社が電力を緻密に計算しており、パソコンの台数、エレベーター、電灯数まできちんと管理されている。
それによって、年間の計画を立て、必要最低限の電力をいかに安く調達するかという分析に回している。
従って、個人が家電品を持ち込むこと、使用することは禁止されている。
ただし、禁止されていると言っても、総務部が決めたビル管理ルールであり、それに違反したからと言って懲戒の対象になるわけでもないし、ボーナスの評価にも影響しない。
そもそも、そういうルールがあることを知らない人のほうが多いくらいだ。
企業にはさまざまなルールがある。
就業規則、出張規程、セキュリティ規定、ビル管理規則、コンプライアンス規定・・・
だがそれらは、どこかに見に行かなければ見られないものが多い。
いちいち紙で配るのは、就業規則くらいのものだ。
従って、一度や二度、周知したくらいでは、ほとんどの人が目にしない。
そんなルールがあるということすら知らない人が多い。
そして、ルールを知らない人はそれが「ルール違反だ」と指摘されると「そんなルールは聞いていない」
「どこに書いてあるのか」そして「いつ周知したのか」と畳みかけてくる。
つまり「オレ様にルールができたことをきちんと伝えたのか?あぁ?」と言ってくるのである。
さらに悪質になると「そんなルール守っていたら、仕事にならんだろう?オレ様に仕事をするなって言うんだな?」と来る。
バカは死ななきゃ治らない
佐藤さんは、家電は禁止だということをバカ造に伝える気にはならなかった。
彼の反論が瞬時にイメージできたからだ。
だからといって気を遣うことはない。
「その風が僕に当たらないようにしてくれないか?」
若造はひとこと「はぁ」と言ってスイッチを切った。
これでいいんだろ?と言わんばかりに。
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