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2016年5月29日 (日)

扇風機恐怖症

佐藤さんの会社では朝8時にエアコンの運転が始まる。
それは9時の始業時間にやってくる社員たちを「冷えた会社」で迎えることで、心地よく1日を始めてもらおうという会社の気配り。

かというと、そうでもなくて、同じ電気代を使うならば、その方がクレームが少ないからだ。
8時からの1時間、余分に電気代がかかるが、その分は就業時間内の設定温度をこっそり上げて、取り戻している。
そして、その方が就業時間内にまんべんなくエアコンをつけるよりは、格段にクレームが少ない。

責任逃れの知恵と言えなくはないが、働く側にとってみれば、朝来た時に涼しくていい気分になり、錯覚とは言え1日を不満なく過ごせることは、いいことである。


その日も、暑い1日が始まっていた。
NHKの天気予報では「名古屋はこの夏、最初の真夏日になる」と言っている。
出社してパソコンにログオン。
仕事を始めた佐藤さん、始業して40分ほど経ったところで、ある違和感に気づく。


左腕に風が当たっている。
エアコンの吹き出し口は天井にあるが、いつも風を感じるほどのエアコンが入っていた試しはない。
しかもこの風は後方から時おりやってきて、去って行く。

細かいことを気にすまい・・・
そう思い直した佐藤さんだが、さらに20分ほどしたところで気分が悪くなってきた。
もしや?
と思って振り返ると、そこには扇風機。
ゆるやかに回る小型の扇風機は、120度くらいの広角で首を振っている。

やはり、そうか。
佐藤さんは独りごちる。

そう、彼は扇風機恐怖症なのである。


それは遡ること10年前、家族旅行で岐阜の温泉旅館に泊まった時のことだ。
家族が寝静まったあと、彼は蒸し暑さに目を覚ました。
とても古びたその宿にエアコンはない。
あるのは、縁側に1台の扇風機。
彼は「弱」のスイッチを入れて涼んでいるうち、そのまま眠ってしまった。


次に目覚めたのは2時間後。
彼は強い吐き気に襲われて目覚め、そのままトイレにかけこんで吐いた。
彼のカラダはすっかり冷えていて、心臓は自身の軽率さを戒めるように強く打ち続けていた。

<最終話へ>

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