覆面パトカーという名前はいかしている
福岡の太宰府インターから高速に乗る。
高速と言っても、日本にある高速道路は「東名」と「名神」で、あとは自動車道路である。
九州自動車道を一路南下する。
鳥栖を過ぎるまでは片側3車線
久留米の手前で1つ減って2車線になる。
それでも、日頃はさほど渋滞しない。
八代インターで降りて一般道路、国道219号線に移る。
別に高速を降りたいわけではなく、当時は八代までしかつながっていなかったのだ。
ほとんど信号がなく、クルマも少ない晴れた午後。
「助かりません。救急車到着まで1時間」
といった道路脇の看板にびびりながら、睡魔と戦う。
そんな時は、カーステレオから流れてくる音楽に合わせて、絶唱するのがいい。
歌いながら眠れるという人は、なかなか居ないものだ。
ループ橋を経て「えびのインター」から再び、高速へ。
そこから先は宮崎自動車道。
ここは、さらに輪をかけてクルマが少ない。
ある日のこと。
ついつい睡魔に負けてしまい、うとうとしながら走っていた。
もちろん、完全に寝ているわけではない。
まずい!
ふと我に返ってみると、さっきまでと違う車線を走っていた。
片側2車線の左側「走行車線」をゆっくり走っていたのに、気がつくと右側の「追い越し車線」を走っていたのだ。
慌ててバックミラーで後方を確認したが、視界の届く範囲に後続車はなかった。
それ以来、宮崎自動車を走る時は、気合いを入れて歌いながら走ることに努めていた。
その日、友達が買ってきてくれたパイオニアのカーステレオから流れていたのは大沢誉志幸の「クロール」
夏場にはぴったりの歌。
くろーるぅ♪
曲がサビにさしかかった時、バックミラーにやたらと接近しているクルマが映った。
いつもならば、後続車自体が珍しい。
これだけ空いているのだから、こんなに寄せなくても、さっさと追い抜いていけばいいのに。
そう思ったら、助手席のおじさんがなにやら叫んでいる。
カーステレオから大沢誉志幸を大音響で鳴らしていたため気づかなかったが、彼はマイク装置を使い僕に話しかけていたのだ。
福岡ナンバー****、停まりなさい!
それは、初めてみた「覆面パトカー」だった。
別に運転手がミル・マスカラスのように覆面をかぶっているわけではない。
警察車両なのだけど、パトカーのように黒と白で塗り分けていない。
一般車両の装いで、正体を隠しているから覆面パトカー。
確かに、ミル・マスカラスの正体は謎だった。
(一応)
(一応)
謎だからこそ、好奇心をかき立てられて、ファンになったのだ。
そんな「覆面」を名乗るなんて、なかなかいかしたネーミングではないか。
などと言っている場合ではなく、路肩に駐車を命じられた僕は、覆面パトカーの後部座席で薄給にはつらい金額をつきつけられて青くなったのだった。
つづく
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