また来年マラソンを走ってしまう理由はゴール直前にあった。
キロ10分台でとぼとぼ走っている僕を追い抜いて行った健康優良児だが、彼は僕を抜いた5m先で再び歩き始めた。
いくら僕がとぼとぼ走っていると言っても、さすがに歩くよりは速い。
その左側から難なく追い抜いていく。
すると、僕から抜かれた途端、彼は再び走り始めたのだ。
なめんなよ
(猫じゃないんだから)
その行為にぷちんとネジが飛んでしまった。
冷静な判断力を失った僕は、猛然と加速する。
あっという間に若者をぶっちぎった(はず)
すると僕のスピードあふれる走りに抜かれた50代のおじさんが、再び抜き返しに来た。
きっと、ここまで来て誰かに抜かれるのはイヤなのだろう。
僕はさらに加速する。
あれ、左足痛いんじゃなかったっけ?
ふと思い出したが、足は動いている。
まっいいか。
もうゴール前の直線に入っている。
コース左側にはスタンドがり、他のランナーを応援に来た人々がランナーを見下ろしている。
どーだ、オレの走りを見ろ!
誰も見ていないのは百も承知ながら、完全に激走スイッチが入ってしまった。
マラソンを走っていて、過去にも同じような経験がある。
とくしまマラソンで、逆風が終わりようやく折り返した時だ。
だが、あの時はまだ残りが長く、1kmくらいでスイッチが切れた。
見る見るゴールが迫ってくる。
もう誰も僕についてこれない。
ゴールゲートが見上げる角度まで、近づいた。
あぁ、もうこれで終わりなのか
もう走らなくていいんだ
安堵と名残惜しさが交錯する
マラソンが終わる時のこの感慨がたまらない
自分はこの瞬間が味わいたくて、マラソンを続けているのかも知れない。
ゴールラインを確かに越えたことを確認して、スピードを緩め、miCoach SMART RUN(MC)の時計を止めた。
後にMCの記録を見ると、ラスト500mはキロ5分30秒のスピードで走っていた。
直前まで10分台半ばだったので、およそ2倍の速度だ。
10年前、初マラソンのゴールは、制限時間の7時間ぎりぎり。
荒川に夕暮れが迫っていた。
僕が着ていたFCバルセロナのユニフォームを「野球」と思ったのか、大会審判員が「日本勝ったよ」と、その日行われていたWBCの結果を教えてくれた。
今日は時計こそ短いものの、10年前の僕に胸を張れるほどではない。
着ているのはFCポルトのユニフォーム。誰もなにも声をかけてくれない。
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