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2016年10月26日 (水)

遺族代表挨拶で原稿を忘れないコツをつかんだ

マイクの前に立ち、こうして見渡してみると、思ったより座席が埋まっている。
明け方、たくさん並んでいる椅子をみて
これが半分も埋まらなかったら寂しいな
と考えていたのがウソのようだ


その会葬者たちに視線は合わせない。
会社のプレゼンではないし、誰かを説得するわけでもないから誰かをマーキングして話す必要はない。
むしろ、誰かの目を見てしまうと、話すことを忘れそうな気がした。

どこにも焦点を合わせず宙を見る。
ただ一つだけ妙なことに、すぐ目の前にご輪番さんと若い僧侶が並んで座っている。
それもこの際、気にしてはいられないので頭から消し去る。
結果的にお二人に話しを聞いてもらったことは、あとで意外な展開となった。



父が浄土に還ってから、私たち遺族は
親が死ぬということについて自問自答を始めました

そして、こうして母が逝きました

私たちはこれまで「誰かの子供」としての人生を送ってきました
これからは「誰の子供でもない」人生を歩み始めます

本当の自立とは何か考えていきたいと思いますので、
どうぞ、皆様の変わらぬご指導をお願い申しあげます



無事に話し終えることができた。
事前に留意しておいたのは「間をとって話すこと」

間をとらないで話すと、文節をつなごうとする心理が働くため、自分が言おうとしていたことから逸脱してしまいがちだ。

1つの話しが終わったら、しっかりと間を取る。
秒数でいえば「3秒」くらいだ
この間は「間を恐れる人」にとってはとてつもなく長い。
そして見る人によっては「話すことを忘れたんじゃないか」ともとれる。
(実際に「途中で話すこと忘れた?」という指摘があった)

しかし、この3秒によって、次に話すことを落ち着いて思い出すことができる。
3秒もあれば大抵の短期記憶は思い出せるものだ。
本当に忘れてしまった時も、常に3秒の間をとっておけば、聞いている側に違和感を与えない。

僕はこうして、遺族代表挨拶で原稿を忘れないコツをつかんだ。
だが、この技術を活かす機会はもうない。



僕がお辞儀をして席に戻った後、
「導師 様 ご退場です」
というアナウンスが入り、2人の僧侶は控え室へと戻っていった。

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