斎場へまさかの再登場
献花が寄せられる
さっきまで壁際を彩っていたスタンドから下ろされて、遺族や親族に渡される。
花は故人になじみの深かったスポーツ団体、あとは、遺族の職場から送られてきていた。
中には孫の会社からのものもあった。
ありがたいことだ。
これほどまでに花をいただくということへの感謝を感じたことはない。
いただいた皆さんには、特別な共感が沸いた。
できれば、何かの折には違ったカタチでご恩返ししたいものだ。
母が窒息するのではないかと思うほど、花がぎっしりと手向けられた。
今さら窒息するわけはないのだが、口もとにかかっている花を少しどけた。
その方が息がしやすそうだ。
(してないけど)
もう、よろしいですか?
斎場を取り仕切っている係員が声をかける。
すると、その声を遮るように
1人のおばあさんがやってくると、棺に横たわる母を揺さぶり始めた。
母のスポーツ仲間で先輩に当たる人だ。
なんば寝とっとね、しっかりせんね!
ばん、ばんと体を叩いて起こそうとする。
しかも、長い
一瞬のことならば、母を想っての気持ちが溢れているのだなと、ありがたい気もするのだが、徐々に迷惑な気持ちが頭をもたげる。
だいたい、遺族と親族以外は退席していたはず。
なぜ、このタイミングで戻ってきたのか。
一旦控え室に戻ったブッチャーが再びリングサイドに現れて、暴れているようなものだ。
遺族が止めるわけにもいかないので、斎場の方が諫めてくれればいいがと期待していたが、彼らも遠巻きにしている。
しばらく経って、着いてきたもう1人のおばあさんに連れられて、再び退席していった。
母の顔を直に見ることができるのは、ここが最後。
そう考えて、ここが特別な時間のように想う。
だが、母の時は数日前、止まっているのだとも想う。
その気持ちをやりとりしながら、この時はただ、最後の姿を目に焼き付けようとじっと母を見た。
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