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2016年12月13日 (火)

エースニット帽 asics XAC121 とのお別れ

ニット帽が僥倖に出たと思われる旅先まで、乗換案内でしらべると往復で旅費は3,000円を超えることがわかった。
我がニット帽asicsXAC121は、1円も払わずに既に1,500円の旅をしてしまったのだろうか。


このasicsXAC121は僕にとって、生涯初のニット帽。
それまで、あぁいうものをかぶっていいのは、学生だけだと思い込んでいた。
なぜ学生かというと、ニット帽といえばスキー、スキーといえば学生という連想である。
学生時代にニット帽を買うことができなかった僕にとって、もう一生縁のない代物。
それなのに、ニット帽に手を出したのはマラソンを始めて5年、冬場のRUNが体にこたえるようになったからだ。


そこで、研究に研究を重ねて選んだ乾坤一擲?のニット帽。
それがXAC121だ。


このニット帽は、asicsがNASAのために開発した温度調整素材「アウトラスト」が使われている。
パラフィンワックスが入ったマイクロカプセルが、ファイバーに組み込まれたり、生地にコーティングされており体感温度を一定に調整する。

いわゆる"暑くならない"ランニング用ハイテクニット帽だ。


繊維の中のマイクロカプセルが快適な温度に保つため、走り始めは少し寒くても、走り始めると暑くも寒くもない。
吸汗、湿気放出機能があるので、蒸れにくい。

ただし、10km、15kmと走っていると、さすがにその汗を生地が吸ってしまい不快になる。
だが、それを回避できるニット帽はまだない。


はじめのうち、デザインが地味すぎることが難点だと思っていたが、長年使っているうちに、それはむしろ長所となった。
どんな時にでも、気軽にかぶっていける。
合わせる服を選ばない。
その後、3つのニット帽を買い足して、ニット帽4個体制となった今も、もっとも多用するエースニット帽だ。



こうして振り返ると、名残惜しくなって来るのだが、そのために3,000円の出費は痛い。
だからと言って、その消息を確かめないわけにはいかない。
なにせ、この5年間、ずっと共に冬を過ごしてきた相棒なのだ。


となりの県の電鉄会社に電話をかけた時、そこで君が見つかることを確信していた。
しかし、君はそこにもいなかった。

意外を通り越して、想定外だった。
もしそこにいると言われたら「送ってください」と泣きつく予定だった。
しかし、それもかなわない。

君が満員電車の乗客に踏みつけられて、どこかの線路上に蹴り出されたりしていないことを祈る。

そして、誰かがひろって「ラッキー」と言わなくてもいいから、使ってくれていればと願う。

それは、若者がかぶっているニット帽に憧れていた老人かも知れないし、かつての僕がそうであったように、防寒具も買えず、寒さに凍える苦学生かも知れない。

おわり

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