ニット帽を尋ねて3時間
僕はKindleをカバンに仕舞い、ホームに降りた。
Kindleは電源を切らなくても、そのうちスリープに入ってくれる。
買ってすぐの頃は、何ヶ月か充電することもなかったため、いったいどんな魔法の電池が仕込まれているのかと思っていたが、最近では、ほぼ期待通りに充電が切れてしまうようになった。
電源オフにしなくても、その読み終えた位置は本体、そしてクラウドに記憶される。仮に次にパソコンのKindleアプリで開くと「あなたはこの機械で何時何分に何ページまで読んだけれど、その位置に移動するか?」と聞いてくれる。
便利な世の中になったものだ
改札に向かう下り階段へとホームを歩いていた時、頭が風を感じた。
しまった、ニット帽がない
そうか、膝に置いたのを忘れていて、そのまま立ち上がってしまったんだ。
▲
再び、電車に駆け寄った
まだ駅員さんからの「駆け込み乗車はご遠慮ください」のコールはかかっていない。
今ならば電車に乗ることはできる。
一駅先まで行く間にニット帽を確保して、次の駅から折り返すか?
しかし、その時、過去の経験が想起された。
数年前、冬物の手袋を左手だけ置き忘れたことがあった。
その時は、気づいた時にはもう電車は走り出していた。
鉄道会社に問い合わせると、その手袋は終着駅で拾得されていた。
恐らく、すべての乗客からスルーされて、終点に着いた電車をチェックしていた車掌が見つけたのだろう。
だが、終着駅はとても遠かった。
そこまで行くために片道50分、往復100分
もちろん運賃も往復分必要だ。
送ってもらえないのですか?と尋ねると「1週間後には、本社の忘れモノセンターに集約される」のだという。
それは片道30分の場所にあり、1週間後、そのセンターに手袋を迎えに行ったのだった。
また、取りに行けばいいか。
もし、どうしても必要ならば
■
この★から■までの間、わずか3秒ほど。
僕は、ニット帽を乗せた電車を見送ると、駅のホームに貼られていたダイヤ表から列車番号を控えた。
「40A」や「915F」のような、そのダイヤにユニーク(唯一無二)に振られた番号である。
問い合わせる相手は鉄道会社の社員なので、この番号を言えば、話が早くなる。
その推察は当たっていて、問い合わせた忘れモノセンターでの話は速かった。
それはダイヤモンドを5つちりばめたニット帽ですか?それとも大手服飾チェーン店で売っている980円のニット帽ですか?」
そんな回答を期待していたが、予想外にもニット帽は拾得されていなかった。
そして、オペレーターは続ける。
その電車は、引き続き相互乗り入れしている電鉄会社のダイヤになっています。
あとは、そちらの可能性が・・・
その相互乗り入れ先はとなりの県、終点までは片道1時間半はかかる。
ニット帽を尋ねて3時間・・・
つづく
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