トイレに入って来た男を必ず、確認する男
人は一日に何度かトイレに行く。
それは男も女も同じだ。
ただ少し違うのは、女はすべてが個室であり、互いの行為を見ることはないが、男の場合「小」では、その後ろ姿が丸見えと言うことだ。
小便器に向かって立っている時、男はとても無防備である。
もしも、放出の最中に小脇に抱えたカバンをひったくられそうになったら、ホースを相手に向けて撃退しなければならない。
持ち去られてしまった場合、いったん鞘に収めるのに手間取り、追いつくことは難しいだろう。
それだけではない。
誰かにヨコに立たれると、出るものも出なくなるということがある。
「そんなことを意識して出なくなるなんて、オレはそんなに器の小さい男じゃない」などと意識すればするほど、水道栓は固く閉じられてしまう。
小便器は「金隠し」という出っ張りがついている場合、ヨコからの「のぞき見」を防いでくれるが、最新式の便器にはこうした形状ではないものも増えている。
誰も好きこのんで「のぞき見」しはしないのだが、つい、見えてしまうということもある。
小便器に立つのがいやだから、個室で「小」をするという男性も増えている。
内閣府の調査では半数以上の男性が、そうしたことがあるらしい。
(ウソです)
渡くんは、今日も小便器に立ち続けている。
そこに立っているということは、それがあまり苦になっていないのだろう。
だが、それにしては不審な挙動をする。
渡くんが「小」をしている。
なぜか、いつも彼は一番手前の便器だ。
奥が全部空いていても。
そこに、他の人がやってくる。
すると、彼は首をきっちり90度旋回して、正面からその人をにらみつける。
眉間にシワが寄り、まるで獲物を追うハンターのような鋭い眼光
一方、下半身は便器に正対したままで、放出はつづいている。
上半身と下半身の緊張感には、民主主義と共産主義くらいのギャップがある。
なぜ、彼は必ず振り返るのか。
動いているものは、全部見なければ気が済まない夢見る幼少期はとっくの昔に終わっているはず。
新たに「参戦」してきたのは誰かを確認しているのか?
トイレの見張り番かっ
あるいは、誰かに背後に立たれるのが怖いのか
もしかして、父親はスナイパー?
睨まれた相手は、伏し目がちに視線をそらす。
なぜならば、トイレでガンを飛ばし合うのは、ツッパリハイスクール・ロックンロールな学生くらいであって、立派な社会人がすることではない。
まともな大人の男は、トイレで他人をじろじろ見たりしない。
そして、フシギなことに、まったく同じ行動をとる人がもう1人いる。
この2人が並んで「小」をしている所には、まだ遭遇していないが、もしも、そういう機会が訪れたら、僕は目を伏せて苦笑いを浮かべるだろう。
「なんで、こっち見るの?」
聞いてみたい気は一切しない。
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