ムリして会社に行くことで、他人の人生を台無しにする人たち
ごほ、ごほ
「もうぼろぼろです」
周囲に泣きを入れながら、羊さんは仕事をしている。
羊さんはこの三日間、ずっと咳をしている。
かなり、体調は悪そうだが、会社は休まない。
上司は先日来のインフルエンザ流行を受けて「周囲に迷惑がかかるので、ムリをせずに休んでください」と周知しているのだが、自分だけは関係ないと思う人なのだろう。
そういう人は、とても多い
咳をしているのにマスクをしていない人もいる。
こちらが嫌な顔をすると
「大丈夫、これは違うの。キレイな咳だから」と言う。
いったい、どこの世界にキレイな咳があるというのか。
羊さんはマスクをつけており、それで一定の責任は果たしている。
(でも時々、外しているが)
周囲にいる同僚からすれば、彼女は菌をまき散らす加害者なのだが、彼女はむしろ、自分は病原菌の被害者なのだというスタンスをとっている。
彼女には想像力が絶対的に不足している。
向かいの席にすわっているサトウさんは、羊さんが咳をする度に気が気ではない。
サトウさんには高校受験を控えた息子さんがいる。
三年間、第一志望校に合格するために、一生懸命頑張ってきた息子には、その夢を叶えて欲しい。
実力以上とは言わないまでも、せめて準備してきた力を十分に発揮して欲しい。
それが体調を崩したために、8割や6割の力で終わってしまうのは悲しい。
もしも、自分が媒介して息子に風邪を発症させたら、どういうことになるのか。
息子は夢破れて、高校ではおかしな方向にデビューするかも知れない。
そこから先も、めざしている道に進めず、望んでいる会社にも入れないかも知れない。
そうなると、生涯獲得賃金で1億円、いや2億円という損失を被ることになる。
だからと言って、その結果が出るこれから先、30年後、40年後。
自分と羊さんはとうに定年退職した後。
「あの時、あなたがムリして会社に来たことで、息子の人生は台無しになった。生涯賃金の差額1億円を賠償して欲しい」
はい、わかりました
ということはない。
羊さんとの縁はとっくに切れているだろうし、もしも、連絡がついたとしても、そもそも立証ができない。
厚労省が「感染被害」について、DNA鑑定を組み込んだ立証と、罰則、補償に関する法律を作らない限り、羊さんのような想像力を欠いた「自分は病気をおして頑張っている悲劇のヒロイン」のような勘違いをする人は居なくならない。
サトウさんは、極力、羊さんが席に居る時は、その咳を避けて、席を外すことを心がけるのだった。
ごほ、ごほ
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