東京マラソンランナーに許された背中の自由度
ポケットから「グレープフルーツチアシードゼリー」を取り出し、慎重にネジを切り風を開ける。
蓋を取り落としてしまったら、ポケットに戻せなくなり厄介だからだ。
120g入りのゼリーは、小出しに摂るのに好適。
ぐいっと飲むドリンクよりも、ゆっくり流し込むことができて、思いのほかいい。
これは、来年のレースでも序盤の給水に使いたい。
賞味期限は購入時点からおよそ1年。
早めに買い置きしておこう。
練習ではウォーミングアップは3km程度。
たいていは3→4kmのラップで心拍数が上がり、レースペースに乗れる。
さて、4kmのラップは依然としてジョギングペースだが、気にしない。
今日は42.195kmの長丁場。
ウォーミングアップを5kmくらいしてもいいだろう。
焦る必要はない。
レースが終わってタイムを振り返った時、この時の考えはレース成否の大きなポイントになっている。
さっきからずっと、前方歩道寄りをマイケル・ジャクソンが走っている。
いや正確にいうと時々止まっている。
沿道の女性が「きゃーマイケルぅ」と呼んでカメラを向けると、立ち止まり奇声(失礼)を上げてポーズを決める。
時々止まっているのに、ずっと僕の前を走っているということは、僕より走力があるということだ。
ハット、ちりちりの髪型、ブラックジャケット
足下をみると、コイン・ローファーを履いている。
よくそれで走れるものだ。
背中には「3.11を忘れない」のメッセージが貼られている。
東京マラソンは背中の自由度がランナーにある。
マラソン大会にはナンバーカードが2枚の大会と1枚の大会がある。
2枚の場合、前後に付けなければならず、その分面倒だし、風にはためいてストレスが増す。
1枚の場合は前に1枚。
背中には何もつけなくてよい。
だから、背中は自由な表現のスペース。
僕は DECO 20 のマーキングをしっかり、後続ランナーに見せることができる。
見せたからどうということはないが、何らかの属性を纏いをアピールする気分を気に入っている。
奇声を上げ、ポーズをとり、ムーンウォークまで始めたマイケルをようやく置き去りにしたところで5kmの第一給水所
1時間半~2時間も給水していないランナーたちが、砂漠に見つけた水たまりに群がるように密集している。
僕はというとゼリーをこまめに摂っているので、給水所はパス。
これで30秒は節約できる。
ここで今日1つめの給食ジェルをポーチから取り出す。
摂るタイミングは、覚えやすいよう「5kmごとに1つ」と決めている。
「35kmまでで7つ」
これは過去のベストレースで採ったメソッド。
正直なところ、胃もたれするジェルを7回も摂るのはしんどいのだが、それによって終盤に足が止まらないことは、過去の事実が証明している。
試しにジェルの回数を減らしたレースでは、終盤に足が止まっている。
ジェルと失速の因果関係を証明はできないが、ダメだったことをわざわざ繰り返すことはない。
それならばと、今回は無理をしてでも摂ってみようという選択をした。
ポーチには、無造作に6種類7個のジェルが入っている。
選んでいる余裕はないので、何が出てくるかはわからない。
ポーチを探ってみて出てきたものを摂る。
味を気にしている場合ではないし、実際に味の違いなどわからないのである。
| 固定リンク | 0
「しらべるが走る!」カテゴリの記事
- 我が心の引退レース(2022.03.09)
- 長崎平和マラソン エントリー方法発表!(2020.02.12)
- 大迫傑曰く「タイムは気にする必要はない」(2020.01.21)
- マラソンの最後の1kmは、それまでの41kmとは絶対に距離が違うと思う(2020.01.20)
- 地道に走り、最下位を脱出(2020.01.18)