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2017年4月 1日 (土)

人は利害の絡むことに口をつぐみ、絡まないことに懸念を表明する

その日は朝から調子の狂う一日だった。

朝には寄り合いが入っていた。
ただでさえ好きではない「会議」が、一日のはじまりに入っているとは、なんと不幸なことか。
不幸中の幸いは、自称「いい大学を出た」キーマンが熱弁を振るうのを黙って聞いていればよいということだ。
ときどき「うんうん」と頷いてやれば、彼はいい気分になってさらに独演してくれる。

話が佳境に入るころ彼は言った。
「このままでは、ルールのきじゃくせいを突かれないとは限りません」

もちろん誰も目を白黒させたりはしない。
「しかし、ルールの変更はもろはのやいばでもあります」


いや、全然違うだろおまえ、もしかしてバカ?
と誰も口に出したりはしない。

いい大学を出た人に対して、世の中のあらゆる組織は「漢字の書き取り」を免除しているのだろう。
キーマンがこの先、漢字も読めないヤツとして笑われようが、それは周囲の課題ではない。



お昼過ぎ、街に出た。
東京はお昼どきも電車が混んでいる。
そこは、ホームドアがない駅
発車のベルは鳴り終わっているが、次から次に人が乗ってくる。

「駆け込み乗車はご遠慮ください」
駅員が苛立った口調でアナウンスを入れる。

すると「駆け込み乗車はダメだから」と言って、歩き込み乗車するおばさん2人。
車内に居た乗客はそのおばさん達のせいで、いつまで経っても出発できない。

おばさんにかまわず、ドアを締めて思い知らせてやればいいのに・・・
誰もが思っているが、もちろん口には出さない。

ホームの係員もそんなおばさんが乗り終わるまで、ドアを締めようとはしない。



駅を降りた商店街には数年前、監視カメラがついた。
その落成の日には「祝!監視カメラ設置」のくす玉が割られた。
頭のはげた商店会の会長さんが祝意を述べる。
「ようやく、わが商店街も安全宣言が出せます。これで、地域の皆さんは安心して暮らせるでしょう」

その話しを伝え聞いた雑誌のライターは「監視カメラを祝うなんて世も終わりだ」と書いた。

その記事は地元住民の目にも触れることになったが、誰も何も言わない。
特に言及するほど関心がないのかも知れないし、監視の強化に賛成なのかも知れない。
それに、今さら何か言ってももう遅いということは明白だ。



数年後、そのライターが商店街のはずれで事故に遭った。
自転車で走行中、自動車にひき逃げされたのだ。
深夜だったこともあり目撃者は現れなかった。
近くに監視カメラがあれば、犯人の車が特定されたかも知れない。
商店街のカメラに映っていた自動車は、いずれも塗装の成分が異なっていた。
「街灯もない道で監視カメラもないなんて」
ライターは行政の怠慢を声高に叫んだ。

だが、警察関係者はライターが、真っ黒いコートを羽織り、無灯火の自転車でスマホを操作しながら道路の真ん中を走行。しかも一方通行を逆行していたことについて、もちろん口に出さなかった。
それが「大人の対応」というものだからだ。


人は利害の絡むことには口をつぐみ、何も言わない。
利害の絡まないこと、その相手にだけ、懸念を表明する。

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