僕がもの言う時、書く時に使いたくない言葉
2009年、民主党の鳩山由紀夫が総理大臣になった。
直近に小沢一郎が党首をおろされていて、たまたま党首になったところに政権が取れたものだから、期せずして行政の最高責任者となった。
彼の口癖が「思い」
このような便利な言葉は伝染力が強い。
メディア露出度が高い総理大臣が使ったものだから、加速度的に日本に蔓延した。
立派なことを言いながら、それを「個人的意見」だと予防線を張り、立場としての責任を曖昧にする時に使う狡猾なことば。
それが「思い」
行動がまちがっている人が、言動で自己を正当化する時に多用する。
「思い」を口にする人の特徴は次の3つ。
■自己顕示欲が強い
■責任感が乏しい
■言葉が軽い
「思い」は2009年から無責任な人たちの間で急速に広まった。
以下はその記録だ。
2009年10月14日
鳩山首相
過去最高44兆円の国債発行に当たり
「赤字国債は本来なら発行すべきではないが、税収の落ち込み具合を勘案する必要がある。赤字国債は発行したくないという基本的な思いはある」
自分は「思い」を思っているぞ、まともな感覚の持ち主だぞ。と自己防衛しているのだが、その後の体たらくをみれば「思い」を口にする人の危うさが際立つ。
2010年1月23日
東京都江戸川区で7歳の男児が親から暴行を受けて死亡した事件を受けて
男児が通う学校長
「もっと注意深くしていればという思いがある」
文科相
「教育現場に、感度が低いという思いがある」
この2人は自己防衛していない。
だがその責任を曖昧にする(言葉の強さを和らげる)ために「思い」を使っている。
「もっと注意深くしていればと思う」
「感度が低いと思う」
と言えばよいことだ。
「牛丼並盛りです」を「牛丼並盛りになります」と言うように「思い」を婉曲表現として使っている。
「思い」を口にする人は、自分の言葉を持たない。
「思い」ブームが始まり、こんなシリアスな場面ですら「思い」で自己防衛してしまうことに慄然とした。
つづく
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