ターミネーターの赤い目をした男
「左目が赤くなってターミネーターみたいだけど、驚かないでね」
一周忌法要で会う姉にメールを入れてから、左だけ赤い目をして仕事へ出かける。
そういえば今回は左目だが、過去はどうなのだろう。
日記を紐解くと2回めは「右」
毎回違うのか・・
ならば、1回めはどうかと記録をたどったが、何も残していない。
2007年2月の写真フォルダーも探したが、記録は1枚もない。
よほどショックを受けたのか、写真を撮るなんて縁起が悪いと思ったのだろう。
初体験の時、頻繁に「結膜下出血」を起こしているという"先輩"のサトウさんが「熱い蒸しタオルを目に当てたら治る」といって、蒸しタオルを作ってくれたが、僕は治らなかった。
それ以来、無駄な抵抗はしないことにしている。
「時間が経てば治る」とわかっていることは、心強い。
中1の時アワビを食べて顔が2倍くらいに腫れた時は、実に怖かった。
このまま、エレファントマンみたいなこの顔で生きていく自分を想像してしまったからだ。
駅に向かう道、向こうから通学する女子高生が大量にやってくる
帽子を目深にかぶり時に片目をつぶって歩く
(誰も見ていないのに)
仕事場に着く
目を伏せてできるだけ、会話を避ける
しかし、相手から話しかけられるのはいかんともし難い。
ポジティブリスニングの観点から、会話をする際、相手と体を正対して、目を見て話すのが基本だが、今日は斜に構えて、ななめの視線で話す。
しかし、左目が出血している時、右斜めを見ると、より出血が強調されて、相手が一瞬たじろいだのがわかる。
「いやぁ、朝起きたら真っ赤になっちゃってて」
なんて、自ら解説したくなるが、もうそれはしない。
それでも初体験の時は、なにか「言い訳」しなければいけない衝動に駆られて、会う人ごとに「いやぁ、朝起きたら目が真っ赤で」という話題を振っていた。
誰もが見て見ぬ振りをしてくれているような気がしていた午後三時。
新人のマリちゃんが、里帰りのお土産を配りに来て大声をあげた
「わぁ大丈夫ですかぁ?痛そう~」
しかたない、軽く語るか
「これは結膜下出血といって、歳をとると血管がもろくなって出血することがあるんですよ。何年かに一度こうなるんです」
加齢を自虐的に語るようになったのは、いつ頃からだろう。
はじめのうちは「えぇ~歳だなんて(まだ若いですよ)」と言ってもらえていた気がするが、最近、めっきりない。
ぴんぽーん
風呂に入っていると、玄関のインタフォンが鳴った
慌てて水滴を拭き取りディスプレイをのぞくと、若い女性が映っている。
「ヨミウリ新聞です」
新聞の集金だ
新聞屋といえばむさ苦しいおじさんと相場が決まっているが、あいにく、今ウチに来ているのは新聞奨学生の女子大生だ
まずい、選りに選って目が赤い日に・・
相手の目を直視しないよう、やや左を向いて話す
専門書では「1~2週間で自然に治る」「自然に吸収される」と書かれている。
1回めの時に駆け込んだ眼科医は「1週間で治る」と言った。
今回も四日目には目立たなくなった。
だが、あっかんべーをすると目の下に赤い血だまりがある。
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