ペンギン君が教えてくれた「止まる勇気」
こんな、へなちょこ走りを見られたらかっこ悪いと思う反面、どこかで見ていてくれるかも知れないという期待は持っている。
往路の第6給水では会えなかっただけに、一度くらいは親戚の応援というのを受けてみたい。
ランナーは42.195kmという距離を走ることで疲弊していく。
だから、周りも見えないくらい意識レベルも低いのだろうと思うかもしれないが、そうではない。
むしろ、生命維持機能を最大限に発揮するがために、ランナーの意識は研ぎ澄まされていく。
いつもは、誰も沿道に知人がいないレースばかりだが、東京マラソンに限っては知人が応援に来る。
そこでは、100万人を超えるというあの大観衆の中から、知人の姿をしっかり見つけることができる。
第2突堤を過ぎると、その先は東大和町
どこで親戚に見られてもいいように、ここでなんとかしようと、一度コース左端に寄り立ち止まる。
慎重に屈伸を一度
これは、板橋Cityマラソンで終盤、足が痛くて歩きそうになったという話しをしたところ、マラソン仲間のペンギン君が教えてくれた。
「motoさん、足が痛くなったら無理せず、一度止まって屈伸入れたら、また足が動きますよ」
これまで「歩いたら、完走と言わない」と頑なに止まることや歩くことを排除してきた僕に、彼が「止まる勇気」を教えてくれた。
「リセット屈伸」を入れてから、少しは足が前に出るようになった。
だが、自分の足ではない、誰かの足を借りて走っているような違和感は消えていない。
この時、彦島大橋を過ぎたあたりからなのだが、これまで経験したことのない感覚を味わっていた。
着地した足で地面を押していく
その足がくるりと回転して、勢い余って甲が地面に付いてしまうようなイメージだ。
そのせいで思い切り、前へ推進力を得るのが怖く、慎重に足を裁いている。
これは、ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%のカーボンの反発力が成せる業かも知れない。
このイメージはゴール直前まで消えなかった。
第2突堤から第1突堤へ
コースは至って平坦、少しずつ足の隅々にまで酸素が行き渡り始めている。
あと1km
東大和町に帰ってきた。
さっきより、沿道の観衆がまばらになった。
下関駅のガード沿いだが繁華街ではないため、人口が少ないのだろうか。
1人のランナーが倒れて、沿道の人が介護している
救急車の到着を待っているようだ
下関海響マラソンは過去9回大会では、1人も心肺停止となったランナーが出ていない。
6万人に1人の割合で心肺停止が起きているマラソンでは、希有な状況と言える。
(東京マラソンを走っていてとなりを走っていた芸能人が心肺停止になったのを見たことがある)
東京マラソンのような比較的楽なコースで毎年のように心肺停止者が出る一方、タフな下関海響マラソンのコースで出ていないというのは不自然な印象がある。
恐らくそれは、コースの難易度ではなく、きちんとした練習をしていない人、走るべきではない状態の人が出ているかどうかに関わる問題なのだろう。
シーモールパレス前の信号を過ぎると、そこからは繁華街
ここからぐっと観衆が増えた。
ここに来てほとんどのランナーが、走っている。
スピードが乗ってくる
マラソンでは終盤のラストスパートは危険なため、してはいけないという注意喚起をするレースもあるくらいだが、最後に観衆が多い「ウィニングラン」が用意されているコースでは、するなという方が殺生だ。
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