五島産業汽船
有川に着いたら五島うどんを食べてからレンタカーと決めていたので、レンタカーの予約時間まで30分が空いた。
すると、ターミナル一階におあつらえ向きの施設があった。
「鯨賓館ミュージアム」
こう見えても捕鯨ファンだ。
有川がかつて捕鯨で栄えた町だったことは知らなかったので、ひとつ勉強しようじゃないか。
DVDで放映されていた「有川の捕鯨のしくみ」は、とても興味深かった。
高台にある鯨見(くじらみ)~鯨を見張る物見~で鯨が近海を通りかかると、一斉に出航。追い込む船、銛を打ち込む役割、とどめを刺す役割、仕留めた後の運搬方法まで。
子どもの頃、浦桑の浜で見たイルカの追い込み漁を思い出した。魚目小学校では、その日、イルカがあがるとなると、授業が中止され、全校生徒が浦桑の浜まで見学に行く。
その凄惨な光景は子どもにはきつい。なぜ、父親たちはこうしてイルカを殺さなければならないのか。それを身をもって体験させ、考えさせるのだ。
期せずして鯨の歴史を学び、ちょうどレンタカー予約の時間。
レンタカーはホテルから紹介された五島産業汽船。フェリーターミナル内に窓口がある。それもそのはずで五島産業汽船は後発で五島航路を就航させた海運会社。
僕がそれを知ったのは、五島から帰って2ヶ月後の10月だった。
2018年10月初旬、五島産業汽船が当面全航路を運休することを決め、10月2日から運休していると報じられた。
佐世保と上五島をむすぶ定期船は老舗の九州商船(1911年設立)が1日に2便、フェリーと高速船を1便ずつ運航している。
一方、五島産業汽船(本社・長崎県新上五島町)は1990年に設立され、歴史は30年に届かない比較的新興の業者。
朝日新聞DIGITALでは五島産業汽船の運行休止について
「長崎と五島結ぶ定期船、突然運休 地元どうしたら・・・」と見出しを立てたうえ"新上五島町へ向かうフェリーに乗る予定だった男性会社員"の話として「先方と約束があるのにどうしたらいいのか」というコメントを載せている。
記事では九州商船の存在には触れていない。
この記事を読んだ読者にどんな印象を与えたいのかが見え隠れする。
これでは、上五島への航路が途絶えたかのような印象を読者に与えはしないか。
記事に登場する男性会社員は、急いでいるならば、九州商船の便で上五島へ渡ったはずである。戸惑ったかも知れないが、五島に渡れないわけではない。
定期船が止まるということは、人の行き来ができなくなるだけでは済まない。
食料をはじめとするあらゆる物資が絶たれることを意味する。
Amazonもメルカリも新聞も届かない。
空路の定期便があれば、少々費用がかさんだとしても代替手段となり得るが、上五島空港は2006年に休港したままだ。
船が止まると言うことは、島の暮らしを根本から揺るがす。
その重大さを考えて、読者が受ける印象を考慮しなければならない。
五島産業汽船の航路は、10月19日、元従業員らでつくる同名の新会社「五島産業汽船」が長崎-鯛ノ浦間を再開した。
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