マリちゃんの自転車 人が人間関係で悩めない時とは
マリちゃんは考えた
「生命の危機に瀕している時に、人は人間関係で悩めない」
相対的な恐怖がある場合、人は恐れるに値しないことを明確にそう判断できる。
だとすれば、平穏な日々を過ごしている時、相対的な恐怖が存在していない時に「たった1つの恐怖」が発生した時はどうすればいいか?
その時は、名探偵コナンで鍛えたイメージ力を使い、過去に訪れたいくつかの恐怖、あるいは未到来の恐怖を思い描きリアリティを感じることで、相対的に目の前の「たった1つの恐怖」が実は恐れるに値しないと切り捨てることができるのではないか。
そう考えていくと「自転車の恐怖」も「同僚の恐怖」も、どれも恐るるに足らぬものと思えてきて、気持ちが軽くなっていくマリちゃんだった。
今日はスーパーでお肉とルウを買って「週末家ごもり用のカレー」でも仕込もうかな・・・
その日も早めに仕事を終え、タイムカードを押した。
会社近くのTSUTAYAで「準新作になったら借りようリスト」に入れておいた映画を2本借りて、電車に乗る。
いくぶん心の平穏を取り戻すと、今度は別のことが気になり始めた。
防犯カメラで「犯人」がわかったとして、それからどうする?というアイデアが自分にはないことに気づいたのだ。
不動産屋への連絡もすべきではなかったか・・
いや、それを言ってももう遅い。
とりあえず今は、防犯カメラ映像を確認した不動産屋からの連絡を待つしかない。
数時間後、マリちゃんは台所に立ち、悩みがある時に必ず食べることにしている牛肉と、思いのほか安かった茄子を煮立てていた。
TVのニュースで「長梅雨で野菜が高騰しているなか、今年は茄子が安くて美味しい」と言っていた。
がっつりの牛肉とさっぱりの茄子でつくる夏カレー
「言うことなす!」
昔、理研のCMでみた突っ込みを入れ、さぁそろそろルウを投入するかなと思っていた時、マリちゃんのスマホが鳴った。
一旦、火を弱くして「応答」をスワイプ
電話の相手は不動産屋の担当者だった。
まるで、隣りで話しているようなクリアな声に一瞬どきりとするくらい、彼のスマホの音質はく、現代科学はここまで進んでいるのかと一瞬、イメージの世界に遊びに行きそうになったが、気を取り直して通話に集中する。
「自転車の件のご報告です」
不動産屋の担当者は静かによどみなく話し始める。
深刻な事態を告げる時の沈痛さはない。
そして、彼が映像で見たものは、マリちゃんのイメージ力を持ってしても、想定を超えていた。
つづく
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