卒業おめでとう 袴姿の女子2人に僕は言った
初めて訪れた「さいたま新都心」の駅には、お土産物が売ってなかった。
さいたまスーパーアリーナがすぐ側にあり、東京五輪2020のバスケットボールなどが行われるため、ミライトワのオブジェがあったが、地元のお土産物は売っていなかった。
さいたま饅頭とか、埼玉焼きとか
そういったものだ
最近読んだ2冊の本にまったく反対のことが書かれていた。
はじめに読んだ本
「寝る前にノートに明日の課題を書き込むと、寝ている間に脳が備えてくれる」
次に読んだ本
「寝る前に明日の課題を書いてはいけない。睡眠の質が落ちて、脳の回転が悪くなる。書くならば、その日よかったことを」
僕は後者の著者を信頼しているので、よかったことを書くことにしたのだが、さいたま饅頭を買い損ねて、仕方なく手ぶらのまま電車で帰路につく。
上野東京ラインの車輌はクロスシートとロングシートのミックスタイプ。
都心の通勤電車は大半がロングシートなので、クロスシートに座るのが中長距離路線に乗る楽しみの1つだ。
ただ1つ空いていたクロスシートには対角線上に若者が座っている。
すみません、と声をかけてから、僕は背もたれに深く腰掛けて、前に座っている兄ちゃんに膝が当たらないようにすると、すぐにKindleで読書を始める。
電車が発車すると、兄ちゃんがそわそわし始めた。
膝を折り、足の向きを変え、スペースを探している。やがて、僕の股の間が唯一のスペースと見定めると、そこに片足を入れてきた。
僕はぴたりと閉じてはいないものの、決して大股を開いているわけではない。それでも彼にとって、その隙間に足を入れないと、体勢が窮屈らしい。
深く腰掛けたら、いいんだよ
心の中で言った。もちろん、兄ちゃんにその言葉は届かない。もしかすると彼の家には「男子たるや電車に乗ったら、堂々とふんぞり返らなければならない」という家訓があるのかも知れない。
次の駅で、となりのクロスシートが空いた。
僕はそちらに移る。やはり、クロスシートは進行方向窓際がいい。
それに、兄ちゃんのストレス緩和のためでもある。
視界の端に弛緩した兄ちゃんが、さらに椅子からずり落ちて足を投げ出す姿が見えた。やはり、家訓だったか・・
上野東京ラインは停車時間が長い。
発車する前に、一人の女性がやって来た。
対角線に座るだろうと想ったら、僕の前に来た。
彼女も車窓の景色狙いなのかな
僕はKindleに目を落として読書を続ける
すると、今度は女子2人組がやって来た
視界の端に袴姿が映ったところをみると、どうやら、卒業式の帰りらしい
仮にマリちゃんとYUIちゃんにしよう
マリ「けっこう、来てない人いたね」
YUI「**(場所の名前)で皆で写真撮るの夢だったんだけどな」
その内容から、あの大学だなと類推する
マリ「YUIの写真みせて」
YUI「これ、高2のプリ」
マリ「おぼこいねぇ」
YUI「これは闇」
最近のプリクラはユーザー登録すると、アーカイブされる。と最近なにかで読んだ。恐らくYUIちゃんはそのユーザーなのだろう。
YUI「**は二次会なら来れるかもって」
マリ「そうなんだ」
YUI「**は新宿希望」
マリ「へぇ、でも来ないね」
YUIちゃんは続々と届くメール(LINE?)を報告しながら、アーカイブに目を落としている
YUI「これ、初彼と」
マリ「激エモ」
読んでいる本に書いてある「マルチビタミンのサプリは早死にする」といった情報に比べると、彼女らの若者言葉は圧倒的におもしろい。
マリ「YUIの初彼、私が好きだった先輩似てるんだよね~。でも先輩の方がかっこいいけど」
よく言うな
心の中でつっこんだ
いつまでも乗っていたかったが、僕の降りる駅が来た。
スミマセンというと、YUIちゃんが立ち上がって背中越しに僕を通してくれた。
卒業おめでとう!
心の中で言った。もちろん、二人にその言葉は届かない。
今日はこれを日記に書こう(と言いつつブログに書いている)
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