父の引き出しにカセットレコーダーを見つけた
上五島に住んでいた時の職員住宅はとても狭くて、家族全員に個室がわたることはなく、僕は父と相部屋。
その部屋には父の書棚、机、SONYのステレオセット、そして僕の勉強机があった。
ただ、父は居間で仕事をしていて、その机に座ることはなかったので、いつも僕は1人だった。
僕は時々、父の机の引き出しを開けていた。
子供の頃、父の引き出しをこっそり開けたことが、誰にもあると思う。
そういえば、母や姉の引き出しを開けた記憶は無い。
異性に対しては、独自の規制がかかるのかも知れない。
父はあまり小物を多く持つ人ではなく、引き出しがすかすかだったが、どでかい電子計算機、何に使うのか意味不明な金属の道具などがゆったりと仕舞われていた。
ある日、父の引き出しに弁当箱よりはちょっと横長な物体を見つけた。それまでもそこにあったのかも知れないが、僕の関心がその方面に向き始めていて、その物体に強く惹かれたのだろう。
その物体には電気のコードがつながっていた。
僕はあたりの気配を窺いつつ、それを引き出しから出してコンセントにつなぐ。
スイッチを押してみる
かすかに何かが動いているような電気的な音が聞こえる気はするのだが、特になにも起こらない。
もう1度、引き出しをのぞいてみる。
そこには、ちょうどその物体にはまりそうな四角いモノが1つだけあった。
それはコンパクトカセット、いわゆるカセットテープだと後に知るのだが、自家用車のカーステレオは8トラック(通称8トラ)だったので、カセットテープというものを僕はまだ知らなかった。
話しが逸れるが、家族で出かけるといつも8トラックのテープで本田路津子やデュークエイセスを聞いていた。時々テープをカーステレオから取り出して掛け替えるのだが、このテープがいったいどういう仕組みで動いているのかがいつも謎だった(今でも謎なので、今度「Google先生」に聞いてみたい)
恐らく「EJECT」と書かれていただろうボタンを押すと蓋が開き、僕はそこに恐る恐るカセットを入れる。カチャッと音がしてそれはスペースにきちんと収まった。よし、これなら壊れることがないだろう。
「パパのクラリネット」(クラリネットをこわしちゃった)を聴いて育った僕は、父の備品を壊して、こっそり使ったことがバレるのを極端に畏れていたのだった。
スイッチを押した
何かが起きるのを待つ
しかし、なにも起こらない
もちろん音はしない(音が出るものだと知らなかった)
STOP と書かれているボタンを押すと、その前に押下したボタンが元の位置に戻った。
とりあえず、壊れなかったことに安堵して「まだ僕にはムリなんだ」と独りごちて、物体を元通りの場所に戻した。
つづく
| 固定リンク | 0
「ハード・モノ」カテゴリの記事
- かつての愛機RQ-552との再会 半世紀の時を経て買い戻し(2022.08.23)
- エアコンが壊れた!この夏のエアコンの選び方(2022.07.30)
- 2024年 NationalクーガRF-877 発売50周年記念 復刻限定販売を!(2022.06.10)
- 「USBカイロ」を選ぶポイントと運用(2022.01.08)
- 極寒の冬に欠かせないUSBカイロ(3個め)(2022.01.07)