初めてカセットテープから音が出ることを知った日
父の引き出しで見つけたテレコが動かなかった日から、僕の好奇心は日増しに募っていた。
一ヶ月後のある日、もしかすると僕のやり方に誤りがあったのではないかと考えて、再び父の引き出しを開けた。
父は使っていないようで、テレコは1mmも動かず同じ場所にあった。
機械を取り出してコードをコンセントにつなぐ。
「EJECT」と書かれていただろうボタンを押すと蓋が開き、カセットを入れる。
今日は他のボタンを押してみよう
この間押した ▶ とは逆方向に向いている ◄◄ のボタンを押した
機械が動き出した・・
僕の手の動きにより、その機械は制御下に入った
世界が動き出した
さぁこれから、いったい、どれだけのことが始まるのだろう
この時の感動が、今も音楽とその再生機器に格別の好奇心を持ち続けている原動力だ。
わしゃわしゃと音を立てて軸が回っている
僕は固唾を呑んで見守る
大丈夫か、壊れたりしないだろうか
とりあえず、動きは一定のリズムで行われている。
小窓から覗いているのはテープらしきものだ。
初めは分厚かった右側が次第に薄くなるにつれて、左側の軸が厚くなっていく。右から左へ移動しているようだ。
よし、行けるところまで行こう。
ずいぶん長い時間が経った気がする頃、動きが止まった。
音が止まる。
■のボタンを押すと、他のボタンがキャンセルされることは既に経験している。
■を押下して、満を持して ▶ を押下する
人の声がした
音楽ではない
抑揚が安定した1人のナレーターが何かのテーマについて語っている。
その機械にはカセットを入れるスペースと音が鳴るスピーカー
そして、持ち運び用と思われる把手が付いていた。ラジオはついていない。録音用の内臓マイクやイヤホン端子があったかは覚えがない。
電池で使うこともできなかったと思う。
勝手に引き出しを開けていることがばれるので、父にこのテレコを譲って欲しいとは切り出せなかった。
カセットテープをこの機械に入れれば音が出ることを知った僕は、ここから急速にラジカセにのめり込んでいく。
つづく
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