ラジカセのキュー&レビューで磨いた技術
シンちゃんが買ってもらったラジカセは、さほど高機能なものではなかった。
なぜわかるかと言うと、その時点で僕は主要メーカーのカタログを集めていたからだ。
父の引き出しに仕舞ってあるテレコにはラジオがついていない。
頼み込めば、譲り受けることはできるだろうが、それではエアチェックができない。
■エアチェック
ラジオ放送を録音すること
当時、レンタルレコード店はなく、おこずかいで買えるレコードは限られていたので(音質のよい)FM放送から音楽を録音することをこう呼んだ
テレコのお下がりで「おねだり聞いてもらう券」を1枚消費してしまうのは惜しい(そんな券は実在しない)
願いを叶えてもらうならば、2度と新しいものが欲しくならぬよう、ベストの1機を選ぼうと、陽水の「限りない欲望」で学習していた僕は、しっかりと情報を集めていたのだ。
上五島には青方にナショナル、有川にSONYのお店が一軒ずつあり、僕が住んでいた魚目(うおのめ)には電気屋さんがなかった。
2年前に訪れた時は、それがなんと魚目(浦桑)が上五島唯一の繁華街になっていて驚いた。それでも電気屋は青方にしかなかったが。
お店でもらって来たカタログを嘗めるように見た。
もしも、そのカタログを今も持っていたら、あちこちに涎をこぼした跡が残っているかも知れない。
まず、押さえるのは対応できる「録音」のバリエーション。
エアチェックだけでなく、立岡先生から借りて来るレコードも録音したい。
入力は「AUX IN」「MIC」の2系統が欠かせない。
■AUXiliary IN
外部入力端子
カタログに読みが書いていなかったので「おうくすいん」と心の中で読んでいた。間違えていたらかっこ悪いので友達には言わなかった。
今ならば「Google先生」に「AUX 読み」と聞けば良い。
だが、インターネット登場前の世の中は、周りに詳しい人がいなければ終わり。いかに「詳しい人」を多く確保するかが、昭和の時代のテーマだった。
他のラジカセ仲間も発音がわからなかったのだろう。
この端子については、互いに触れなかった。
シンちゃんのラジカセが"高機能ではない"と想った理由は、その機種がキュー&レビューを搭載していなかったからだ。
もちろん、それを口に出して言ったりはしない。
それは、新しいものを買ってもらった友達への最低限のエチケットだった。
■キュー&レビュー
再生中に[FF][REW]ボタンが頭出しボタンとして機能すること
ボタンを押下している間、ヘッドがテープに触れていて微かに音源の音が聞こえる
僕は集中して「キュルキュル」という音が「きゅーん」という曲の終わりのフェイドアウト部分に変わると素早く手を離す技術を磨いた。それは誰かにワザを自慢するためではなく、静かなる自分との戦いだった。
つづく
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