上五島に引っ越して来た日の迷推理
上五島に引っ越して来た日
陸続きではない海の果てに来てしまったことなど忘れて、僕はハイテンションだった。
それは、物心ついてから初めての引越だったからだ。
それ以前にも生まれた佐世保から2度引越をしているはずだが、その日のことは記憶にない。
家財を載せたトラックと僕らの自家用車は同じフェリーで奈良尾に着いたのだが、トラックはまだ着いていない。
僕は家の鍵を開けてもらうと、一番乗りで家じゅうの探検に入る
一階にはうなぎの寝床のような台所(実際に母はここで釣ってきたうなぎを捌いていた)風呂と和式の便所、そして四畳半の居間
本当に猫の額のような部屋をみて僕は「せまっ」とは言わなかったが、ここで一家四人がご飯を食べテレビを見て過ごすには狭すぎると感じた。
その部屋に二間の押入があった。
荷物が届いていないのだから、がらんどうのはずなのだが、そこに未開封のタオルが1つ。僕はそれを手にして、遅れて入って来た母にこう言った。
前にこの部屋に住んでいた人は、みなまつどうと関与してる人だね
今つくった話しではない
小学4年の時には、校内一、本を(借りて)読んでいた僕は「シャーロックホームズ全集」を読了していたため、推理に飢えていたのだった。
ワトソン君じゃなくて、母は僕の名推理をスルーした
特に何かを指摘することもなく
上五島の人ならばわかると想うが、タオルには南松堂と書かれていた。
南松浦郡上五島町青方の電器屋だから南松堂。
長崎県には北松浦郡と南松浦郡があり、それぞれ「ほくしょう」「なんしょう」と呼ばれている。
このお店の呼び名は「なんしょうどう」である。
後日、それを知った僕は、顔から火が出ると同時に、このことは一生誰にも言うまいと心に決めた。
週末の日曜日、僕は父と青方に買い物に来ていた
いつものスーパーで買い物をしたあと、父を南松堂に誘う
南松堂は上五島に一軒だけあったナショナルのお店だ。
ショウウィンドーに見慣れぬラジカセが飾ってあった
カタログを暗記しているので、それが新製品であることは一瞬でわかる
スピーカー周りの装飾が目新しい
そのラジカセは名前を RQ-552といった。
つづく
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