ラジカセをゲットした少年は、なぜ皆、同じポーズで写真に収まるのか?
南松堂からもらって帰ったカタログを熟読した僕は、その先進性にうっとりしてしまった。
値段は39,800円
憧れのスタジオ1980より3,000円安い。何より4万円の壁を切っていることが大きかった。
僕はまだ松下幸之助がどれだけ偉い人かを知らなかったが、すっかり松下魂に染まり、ミュージックセレクターの素晴らしさ、これだけの先進機能を入れながらも、なに1つ基本をおろそかにしていない。しかも、お値段サンキュッパ!
さらに本日限り、なんと!カセットテープ2本のおまけ・・
は言わなかったが、これまでに身につけた、ありとあらゆる知識に、仮面ライダーカードで覚えた説得のコツを駆使して父に迫った。
次の週末、我が家の4畳半の居間には、National RQ-552を抱えて記念写真に収まる僕がいた。
昭和50年頃というのは、写真を撮ると言うことは非日常の行事だった。
フィルムを買ってカメラに入れる。
撮影して現像+同時プリントして手元に届く。
それをナカバヤシフエルアルバムにいれる^^;)
恐らく1枚の写真には100円程度のコストがかかっていたと想う。
そんな手間暇とお金がかかる写真は、そうそう撮れるものでは、いや、撮ってもらえるものではなかったのだ。
その日は猫の額の居間で箱を開けた後、写真に収まった。
父が「一枚撮るか?」と言ってくれたのか、僕から記念に一枚撮って!とせがんだのかは覚えていない。
恐らく前者だろう。思春期を迎えた子供をカメラに収めるのがいかに難しいかは、後に知ることになる。
僕はハンドルを握ってラジカセを胸の高さまで持ち上げて「どーだ」というどや顔を決めている。
どうして、ラジカセと記念写真する男というのは、みな同じポーズなのだろう。
これまでに、雑誌などで何枚かの写真を見たが、一様にハンドルを握り胸の高さにかざしたラジカセでカメラ目線という写真だった。
ラジカセを手にした瞬間というのは、それほど、誇らしく、輝かしく、記念すべき時なのだ。
ラジカセは受け手から担い手へ僕らを誘う。
僕らはテレビで育ち、情報に対して一方的に受け身だった。
ラジカセは音を「記録」し「削除」し「上書き更新」する。
混ぜたり、複写したりもできる。
(挿入はできなかったが)
次の日、学校に着いた僕は職員室に直行し、音楽の立岡先生に陽水の「断絶」をもう1度貸して欲しいと申し出た。
すると、立岡先生は「氷の世界」「二色の独楽」も一緒に貸してくれたのだった。
つづく
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