抜絢器とスキンステープラー
最終話
僕がキツネにつままれたような顔をしていたのだろう
「これです」
市川実日子が膿盆に乗っている、たった今まで僕の頭に刺さっていたピンを見せてくれた。
写真いいですか?
というほど映えるものではない。
役割を終えたピンは、それがホッチキスのピンだと言われても誰も疑わないカタチをしている。
ただ、少し妙なのは、どれもが干からびた蟻の足のように先っぽが内向きで、Kappa(カッパ)のロゴマーク(人が2人背中合わせに座っている)のようなM字型をしていたことだ。
帰宅後、この銀色のハサミのような器具を「Google先生」に尋ねた。
先生は「医療従事者ではない君には教えられないなぁ」と何度か渋ったものの、なんとか一般でも閲覧できる情報を引き当てた。
抜絢器は【ばっこうき】と読む。
スキンステープラー(後述)で打ち込んだ針を抜く医療器具。
英語では「ステープルリムーバー」「ステープラーリムーバー」
実勢価格:1,100円(買わないけど)
抜き方は、ホッチキス(ステープラー)の針を抜く要領と似ているが、非なるもの。
ホッチキスのリムーバーの場合、針の一点に力をかけて引き抜く。
抜絢器の場合、上から中央部分を押さえ、そこをてこにして両端の2点を引き抜くので、肌を傷めず、傷みもなく針を抜くことができる。だから、抜いた針がM字型になる。
ちなみに市川実日子が迅速に5針を打ち込んだ器具は「スキンステープラー」
skin stapler 皮膚を縫合する器具
ホッチキス(ステープラー)と同じギミックで、ステンレス製の針を内蔵している。
それを大工さんが鋲を壁に打ち込むように、傷に対して針を直角に打ち込む。
打ち込む針の形状はホッチキスの針と同じ「コ」の字型。
針の幅は 7mm、深さは5mm以内
骨、血管まで 5mm以上の間隔がある傷口の縫合に使われる。
糸と針で縫うのに比べると迅速に施術できる。
およそ1週間後、抜絢器で針を抜く。
糸で縫う場合は「3針縫う」と言うが、スキンステープラーの場合「3針打つ」という表現が相応しい。
この器具名を知った日の夜、テレビドラマ「BG~身辺警護人~」第3話 で、市川実日子扮する整形外科医が手術の仕上げに「スキンステープラー!」と要求するシーンがあった。
我が身に何も起きていなければ、このシーンを気に留めることもなかっただろう。
抜絢後の数日間、髪をかき上げると傷の周辺に残っていたかさぶたに引っ掛かったが、毎日洗髪しているうちにそれもなくなった。
さらに一週間もすると、シャンプーもコンディショナーも、発毛剤も遠慮無く浸けられるようになった。
この傷がいつか禿げになるのかはわからないが、それが額に吸収されぬよう、日々健康の維持に努めたいと思っている。
躓いたのはホットカーペット。頭が切れたのは掃き出し窓に掛けているブラインドと特定された。
今は、またこけるのでは?と歩くのが怖い。家の中では、足下に置いていたものをすべて片付けた。
外を歩く時は、進行方向の導線に障害物がないか?路面にわずかでも凹凸がないか?
日々、ゴルゴ13のような鋭い目で下ばかり見て歩いている。きっと、500円玉を拾う日も近いだろう。
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