« コーヒースカッシュ(昭和晩年) | トップページ | すでに2021春マラソンの24%が中止を決めている »

2020年8月27日 (木)

コーヒースカッシュ(令和初頭)

本当に頼むんですか?

ぎっしりと書かれた数あるメニューの中から選んだコーヒースカッシュを選んだ僕に彼女はいう。
(博多ではずるい人に「こすかぁ」と言うが、以下、長いのでコスカと呼ぶ)
そこで、僕はこの店に来て初めて、彼女との会話に臨むことにした。

moto え?だってメニューに載ってるでしょ
店員 いや、でも頼む人いないですよ

想定していなかった彼女の応戦。一瞬考えたが、もう頭の中にコスカのイメージができていた。ここはひるまずにいこう

moto え?だって載ってるってことは頼めるんですよね?
店員 ちょっと聞いてきます

そういうと彼女はメニューを持って厨房へ帰っていく。まさかコスカの"スカ"の部分が品切れとか、仕込みに3時間かかる・・ということはあるまい。断る理由はないはずだが。
まさか、奥から前掛けをした店主が出てきて「これは常連さんしか頼めないメニューなんです」ということはないだろう。
当時でも「裏メニュー」という概念は存在したが、明確に認知された言葉は無かった。そもそも、メニューに載せている時点で裏じゃないし。

ランチタイムは過ぎているが、店内は7割方埋まっていて、サラリーマンたちが黙々とコミックに目を落としている。
(おまいら、仕事はいいのか?)
と突っ込んでいると彼女が戻ってきた。

店員 できるそうです

そりゃそうだろと思いつつ、にっこり笑って、じゃお願いしますと返す。すると彼女はまだ食い下がる

店員 まずいですよ
(おいおい)
苦笑しながらも、有無を言わせずお願いしますと突っぱねる
彼女は「後悔しても知らないからね」とは言わず、すごすごと引き上げていった。


なぜこんな30年前の昔話を思い出したかというと、2020年夏、コスカにはまったからだ。
近年、炭酸水はブームの頃を過ぎて、我々日本人の生活に定着した。
2005年にバルセロナに行った時、下調べに読んだ旅行ガイドで「スペインではスーパーで売っている水は炭酸入りとそうでないものがある」と知った。
当時、日本では炭酸飲料といえば、甘味のはいった清涼飲料水を指した。
日常的に味けない炭酸水を飲むとは、スペイン人はずいぶん酔狂な人達だなと思ったが「アグアシンガス(炭酸なし)」と「アグアコンガス(炭酸入り)」を単語帳に加えた。

バルセロナに着いた日、エル・コルテ・イングレスで「ドンデエスタアグアシンガス?」とグラディオラみたいなおじさんに尋ねたら「やるな東洋の兄ちゃん」という顔をされたのが誇らしかった。

それから15年。日本でも炭酸水を生活習慣に取り入れる人が増えた。スーパーでは当たり前のように炭酸水と普通の水が並べて売られている。2015年に飲料としての炭酸水を扱った書籍が増えており、この習慣が定着したのは2015年頃と推察する。


2020年4月、コロナの影響で在宅勤務が始まった。
冷蔵庫から冷えているコーヒーを定常的に確保できる環境になると、コーヒーの摂取量が増えた。そこにあると、つい水代わりに飲んでしまう。
「コーヒーは1日3杯まで」と決めている。摂りすぎは良くない。
そんな時に博多のコスカを思い出した。
そうだ!炭酸水で割ってみよう

変な味だった
数年前、体を温めるには生姜がイイと聞いて、ホットコーヒーに生姜を入れていた時期があるが、あの時の生姜コーヒーに似ている。
でも悪くない。むしろイイ。
これならば、がぶがぶ飲んでも(飲まないけど)コーヒーの量を抑えられる。

それ以来、冷蔵庫にはコーヒーと炭酸水を並べて常備するようになった。
炭酸水を飲むという習慣が日本に定着する25年前、博多でコスカをメニューに出していた喫茶店はとても前衛的だったと思う。
その店のコスカはコーヒーが炭酸で割られていて、レモンの輪切りがグラスにはまっていた。サクランボは付いていなかった。

ほら、まずかったでしょ
とレジで450円を払う時、彼女に突っ込まれたかどうかは記憶が無い。

おわり

| |

« コーヒースカッシュ(昭和晩年) | トップページ | すでに2021春マラソンの24%が中止を決めている »

たべもの」カテゴリの記事