サラリーマン最大の功績
サラリーマン時代、私の最大の功績は戦略人事システムを入れたことだ。
システム担当者の間では「HR(えいちあーる)」と呼ばれている human resorce の分野だ。
たんなる人材管理ではなく、その人の業務を数値化して定量評価する機能を盛り込むのが戦略人事システム。
それは、営業をやっていた頃の事務員さんのひと言で始まった。
サトウさん
「私たちの仕事って、営業の皆さんみたいに数字が出ないから、印象評価なのよね。真面目にやっても、やらなくてもそういうところが評価されるわけじゃなくて、若くて可愛いとか、こびを売るとかそういうことなのよ」
それを聞いて僕はこう考えた。
それは、営業の僕らだって同じだ。
確かに数字は出るけれど、それじゃ数字の順に給料が上がるかというとそうじゃない。
同じ数字を上げるにしても、新聞に巨額の広告宣伝費をかけたり、おおどころの取引先を毎晩のように接待して販売促進費をかける人がいれば、自分の足で稼いで数字を積み上げる人もいる。
営業における「数字」というのは「売上」のことで、誰も「利益」なんか見ちゃいない。
いや、個人ごとに利益を計算していないんだ・・
そうか、それならば会社が、制作や営業、そして管理部門の人も、その成果を数値化してくれればいいんだ。
そうすれば、盆暮れの付け届けがマメだったり、毎晩のように上役の呑み会について回るような人との違いが数値化される。
そう考えていた僕は、後にSEとなった時、数年がかりで上司を説得して、このシステムを入れた。
入れるまでは抵抗勢力との戦いだった。
「社員をコンピューターに管理させるのか」
といった、少し考えればわかるような的を外した意見もあった。
これは、文部科学省が学習指導要領に「パソコンの活用」を謳った時
「教育を機械にやらせるのか」といった意見が出たのと似ている。
コンピューターでできる部分をコンピューターに任せ、創出した時間で人は人だけができることをやる。
文字にすればとてもシンプルだし、異議を唱えるほうが難しいことだが、実際にそう理解して、行動する人は3割も居ないというのが、僕の実感だ。
「数字だけではリーダーは作れても、マネージャーは作れないぞ」
そんな意見も根強かった。
仰るとおりである。組織においてのマネージャーは、目を三角にして数字をたたき出す人よりも、まん丸い目で優しく包んでくれるような人が向いている。
誰だって「褒めて育てて欲しい」と心底では想っているのだ。
戦略人事システムは、実績という「定量」と上司の情意評価という「定性」をそれぞれポイント化して、職種ごとに定めたパラメーター(変数値)を掛けて総合評価をつけた。
だが、僕がこの仕組みを入れたことで、誰かに褒められたとか、出世したといったことはない。
非難は部下が受け、功を為すのは上司というのが、サラリーマンだということは、これだけ長くやっていれば、当たり前のようにわかっている。
ある時、社員食堂で見知らぬ若手の社員たちと相席になったことがある。
まだ、コロナのコの字もない遠い昔のことだ。
2人の若者は、その会話内容からして外回りの営業のよう。2人は食堂で一番安いカレーを食べていた。
スズキ君
「冬のボーナスどうだった?オレなんか全然上がんない。数字はけっこう上なのにな」
タナカ君
「数字はきっちり把握されていても、上司がそこに重きを置かない人だとそうなるよね」
そして、この次にスズキ君が言った言葉が、僕のサラリーマン生活で最高の宝物だ。
「ただ、こうして数字が残っているから、今の上司は見てなくても、次の上司か、あるいは何処かで誰かがきっと見てくれるって確信は持てるよね」
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