Field Castの青シャツを纏うと言うこと
2021年7月7日
東京2020五輪選手村プレオープンの日
いよいよ当日の朝。よく眠れた
落ち着いて目の前のことだけ見ていこう
目の前の1分に集中しよう
良い思い出ができるといい
予めリストしておいたルーチンを済ませていく
これはマラソン当日の朝にやっているパターン
全身、ボランティアのユニフォームを着て出発
靴や上下のウエアはもちろん、ハット、靴下、マスクそして水筒、手指消毒液ボトルまで、支給されたパッケージを忠実に再現する。
事前の研修では「選手村内に着替える場所がない」「基本的に自宅からユニフォームを着てきてほしい」と説明されていた。
5年前、リオ五輪の時に「ボランティアは自宅からユニフォームを着て行く」と聞いていたので、それが当然と思った。むしろ、それを楽しみにしていたくらいだ。
サッカーで慣れているので、ユニフォームを着て表を歩くのは苦にならない。1年前までは五輪ボランティアのウエアを見て、町の人から賛意の言葉が聞けるのではないかとさえ思っていた。
だが、状況は変わってしまった。
職場で「自宅からユニフォームを着て行く」と話すと「(そんなことして)大丈夫ですか?」という反応があった。中には「刺されるんじゃないですか」という人さえいた。縁起でもない。
その意見は荒唐無稽ではあるが、そういう言葉が口を突いて出るほど「五輪絶対反対」の意見がSNSとメディアで飛び交っていたのだ。
それでも、僕は町の人からディスられたり、罵声を浴びたりすることはないと想っていた。そもそも、人は人に無関心だ。これが、実家の佐世保ならば、是非それぞれの反応があるのかも知れない(非のほうは無いと思う)
ここは東京だ。通りにある八百屋の親父と挨拶はしないし「秋の交通安全運動」の襷を掛けて横断歩道に立つお母さんとも会釈すらしない。
ただ、この町の無関心は僕の想像を超えていた。
まだ通勤の人たちが行き交う前の時間帯
住宅街の道を歩く人は少ない
別に誰かに見られてもいいのだが、中学生の通学と鉢合うのは気が進まない
すれ違う人も誰ひとりガン見したりしない
もちろん、罵倒されることも玉子を投げられることもない
1つ1つ「乗換案内」で調べておいた順路をなぞって往く。
想像は次から次へと現実となり過去へ流れていく。時間は未来から過去へ流れている
駅前にある短い横断歩道の信号は赤。だが滅多にクルマは来ない。多くの人がそのまま歩いて行く。だが僕は立ち止まる。
それだけではない。横断歩道がない場所での横断、舗道を蛇行して歩く(意外と多い)あらゆるルール違反や迷惑行為がないよう神経を研ぎ澄ます。ユニフォームを着ているということは、そういうことだ。
古来から、横着者を糾弾するにはその組織にクレームを入れる、新聞に投稿するといった方法があった。ただ、それが横着者の行動を改めさせるのか実効性が怪しかったし、時間もかかる。何より糾弾する側の自分が面倒で「何やってるんだろ、オレ」となっていた。
その状況は2006年、twitterの登場で変わった(日本では2009年頃から普及)
実効性、即時性は申し分ないし、何より糾弾する側が手軽だ。
人は属性を背負うと横着ではいられない
社名が入った営業車であおり運転はしないし、ユニフォームを着て六本木に来た欧州サッカー選手は気品を保つ
Field Castの青シャツを纏う僕らは、襟を正すことが求められている。
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