サラリーマン生活 最後の10分
ドアを抜けてスロープを足早に歩き、僕は会社を後にした。
時間は未来から過去に流れている
僕は会社を辞めた
これから、目の前の一分に集中しよう
だから、意地でも後ろをふり返るのは止そう
と一瞬想ったが、そんなこだわり「屁の突っ張りにもなりませんぜ」とキン肉マンに笑われそうなので、すぐ取り止めて、後ろを振り向いた。
そこには、数分前と変わらず、曇り空に社屋がそびえていた。
福岡、名古屋と出先を経てたどり着き、今やここで過ごした年月がサラリーマン人生で最長となった。
もう2度とここに来ることはない
この時はそう想っていたが、ロッカーにジャケットを吊したままにしていたのに気づき、2週間後に訪れた^^;)
これまで、定年を迎えた数多くの先輩を見送ってきた。
その中に、これは男性に限られるのだが「今日で卒業なんです」と言って、各部署を巡回する人がいた。
あぁはなりたくない
僕にはそれが、感謝のお礼回りというよりは、最後に別れを惜しんでくれる人を探しているように映った。
未練がましい
僕がそう想っているということは、自分が挨拶して廻れば、相手もそう想うだろう。
もちろん「忙しいから、しっしっ」という人は居ないだろうが「私って貴方とそんなに人間関係ありましたか?」という表情をされるのは忍びない。
「老兵は死なず、消え去るのみ」
と言ったのはダグラス・マッカーサー
(いまGoogle先生に聞いた)
僕はずっと「老兵は去るのみ」つまり、先輩は後輩に道を譲り、潔く消え去るものだという意味だと想っていた。
そして今、最寄り駅に向かう道を歩く。
両手には記念品も花束も寄せ書きも持っていない。
定年ですっぱり会社を辞めると決めた日から、静かに消えたいと想っていた。
それは「コロナ禍」という不測の事態で、願いどおり手に入った。とても違和感なく。
サラリーマン生活最後の10分間で起きたこと、言われたことは、きっと忘れないだろう。
それは墓場まで持っていくかも知れないし、持っていかないかも知れない。
定年退職の当日、どんな気持ちになるのだろう?
この数ヶ月、時折そんなことを考えていた。
恐らく淡々としているのだろう。いや、もしかして、最後に突然寂しさが押し寄せたりして・・
明日から仕事という拘束はない
これまで、それが当たり前だったから、脳はそれがなくなることをネガティブに捉えようとする。
けれど、それこそが脳の横暴だ。
脳が「定型パターン」にはめようと「思考」しているのが見える。
今はただ、曲がり角の先によき未来が待っていると信じている
それが揺るがないから、今なにも決めないでいられる
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