退職の意思表示に、まさかの無言2連発
大抵の企業では60歳の誕生日前日に定年退職する。
ずっと誕生日に退職かと想っていたが、民法では前日に歳をとることになっているのでそうなる。
そこからは、会社を離れる人と雇用延長制度を使って残る人に分かれる。
二者択一。どちらを選ぶか?意思表示のリミットは前事業年度の3月末と説明されていた。それは2021年3月。
答えは数年前に出していたので、選択に迷いはない。
ただ、上司になんと言って切り出そうか、上司はどう応えるだろうか。そのロールプレイングは、この半年ほど何回となく脳内でおこなってきた。
今年で定年を迎えるのですが、会社には残らず辞めることにしました
「え゛そうなの。いやいや、それは困りますよ」
いや、違うな
「あぁそうなんですね。お疲れ様でした。それでは引継ぎとか今後のこととかあるので、今度、打合せをしましょう」
きっと、海原部長は僕が居なくなることを歓迎する。
ただ、あまりの嬉しさを表には出せないので、実務的な話しに切り替えて、お茶を濁すだろう・・
半年間、何度、ロールプレイング(妄想とも言う)しても、結末は同じだった。
いよいよ、リミットの日が来た。
予め人事部から送られてきた確認書面に回答を記入して提出する。
雇用延長を 希望する・希望しない
片方に○を付けたところで、僕のサラリーマン人生の終わりが決まった。
人事部に回答書を提出したその足で、海原部長の下へ赴く。
最初に部長、続いて直属の課長へ。僕は順番にこだわる。
在宅勤務制度が導入されてからも、彼はほぼ毎日、リアルに出勤している。
海原さん、ちょっといいですか?
(面倒くさそうにパソコンから顔を上げる)
今、人事に書類を提出してきました
今年で定年ですが、会社には残らず辞めることにしました
「・・・」
続いて、直属の上司である山岡課長のところへ。
今、人事に書類を提出してきました
今年で定年ですが、会社には残らず辞めることにしました
「・・・」
コントではない
噺を造っているのでもない
これが、起きた事実のすべて
まさかの、無言2連発
用意しておいた、表面的な慰留への応酬トークは要らなかった。
これは気が楽だ。それにしても、ちょっと呆気ないが。
節目のイベントが終わると、あとは後任への引き継ぎ。
その目処が立ったところに、二か月間の選手村生活が待っていた。
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