意外だった定年退職の記念品
会社は数年前にフレックス制度となっている。
朝早く来れば、その分早く帰ることができる。
リアル出社ラスト2日めは、定時よりも1時間前に会社に着いた。
いい席を取るためだ。
従来、景色のいい窓際はエライ人の席と決まっていたので、僕には縁が無い。フリーアドレスとなった今、何処にだって座れるならば、窓際に座ってみよう。
既に出社していた海原部長、山岡課長は互いに離れて座っていて、その両方から均等に離れていて、しかも窓際という席をゲットする。
まさに窓際社員だな・・と一人笑う。こういう時、マスクは口元の表情を読まれないので助かる。
いざ座って見てわかったのは、とても暑いということだ。きっと冬は寒いのだろう。1度座ればこりごり。もう座る機会も無いけど
お昼前、品川さんがやってきた
手には何か小さな箱のようなモノを持っている
あれ?ちょっと予想と違うな・・
品川さんから「今度いつ会えるか」と聞かれた時、恐らく、送別会あるいは送別の挨拶についての打診をしたいのだろうと考えた。
送別会?いやいや、このコロナ禍だから
記念品?いやいや、お気遣い無くで
挨拶?いやいや、在宅勤務も多いし、皆さんの手を止めるのも悪いですから
用意してきた応酬トークは要らなかった。
彼女は小さい箱を僕に手渡すと、こう言った。
「この間、IT部門が社長賞をもらったのね。本来ならば、賞金で呑み会をするところだけど、こういう状況なので、記念品にしました」
午後には町田君がやって来た。その手には紙袋を持っている。
ちょっといいですか?と促され、ロッカーの裏についていく
「これまで、大変お世話になったので」
と手にした紙袋には「香酒盃」が入っていた。
「こうしゅはい」は有田焼メーカーKIHARAが手がける、ワイングラスの原理を応用した盃。盃の内側の丸みで香りが対流するので、酒の香りを楽しむことができる。
佐世保生まれの僕に有田はなじみ深い町。とてもいい品を選んでくれたと想う。それ以前に、彼がこんな気が利くとは想っていなかった。
職場では退職者が出る度に、幹事役がこっそりと一人千円ずつを集め、記念品を渡すという習慣がある。それは、ある程度値の張る品となるが、一人一人の顔は見えない。
町田君の顔が見える香酒盃は、僕にとって定年退職、最高の記念品となるだろう。この時はそう想っていた。
そして、いよいよ定年退職日を迎える
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