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2022年6月 1日 (水)

シン・ウルトラマンの省略ポイント(ネタばれあり)

※この文章は、シン・ウルトラマンを映画館で観た3日後に書きました。
ストーリーには触れていませんが、大いに予見となる内容ですので、映画館で観た後にお読みください


「ウルトラマンの知識がない人が観ても面白い?」
友だちからこう尋ねられた。映画を見てきた夜「シン・ウルトラマン」を観てきたよと話した時のことだ。
僕はこう応えた。
知識はなくても面白いよ。もちろん、知識があればその分「そうくるか」という楽しみはあるけどね


「この映画の特徴を延べよ」
もしも、そんな設問があったら、こう答える

ステレオタイプを廃し、見飽きたものを廃し、だからといって、どうだと自慢しない。
作り手のそんな矜持が見て取れる映画


映画に限らず物語というものは始めに背景(伏線)を伝えていく。
伏線を回収する後半では、既に観客の感情移入が起きているが、観客が様子を探っている冒頭の作り方は難しい。
背景が説明調になると、観る側はしらけてしまうので、ある程度の尺が必要になる。

それをなんと、シン・ウルトラマンは映像の力で一気に済ませてしまった。
シン・ゴジラを観ましたよね、今回こんな感じですという説明は一瞬で終わった。
背景は既に作品の告知で語られており、これでいいのだ。
恐らくそこを丁寧にしたら、1時間52分の上映時間は2時間を超えただろう。


シン・ウルトラマンには、以下3つの省略ポイントがある。
すべて、はしょってはいないが、思いの外あっさりしている。

軍隊と怪獣(禍威獣)のリアルな戦闘シーン
混乱する政治家たち
科学者が打倒策を練り上がるまでのプロセス

いずれもシン・ゴジラの見せ場となった要素だ。
ということは、シン・ゴジラから来ている観客にとっては既知のもの。
同じことをやれば、感情を引き込めない。
「今回はどうやるのかな・・」
構えていた観客に対して、作り手は呆気ないくらい、簡潔に話しを進めていく。

これらの省略ポイントにより、シン・ウルトラマンを見終わった時、いろいろなことがあったけど、そのどれもが印象に残っていなかった。


エンターテインメントを語る人の立場は2つに分かれる。
観客側に立つか
主催者側に立つか

「一億層評論家」時代のいま、恐らく前者が圧倒的に多いだろう。
メディア(プロの評論者)は前者で、先にあげた省略ポイントは恰好の「ツッコミ処」となる。

「おもしろかった!」
では、テレビ取材がマイクを向けられた小学生の感想だ。
ただ、実際に映画を見てきて友だちに発する第一声はこんなものだ。

だが、メディアはそうはいかない。
取材者として物書きとして「一億層評論家」とは異なる観客の視点を提示しなければならない。
そんな時、ツッコミ処をみつけて(重箱の隅をつついて)論っていれば文字数が埋まるのである。
評論者にとって「3つの省略」は、まさにツッコミ処満載ということになるだろう。


幼少からウルトラマンの熱狂的支持者である僕は、シン・ウルトラマンついては主催者側に立っている。

ステレオタイプを廃し、見飽きたものを廃し、だからといって、嫌らしくそれを前に出さない。
だからこそ、エンドロールが終わった時、しばらく空虚に佇んでしまった。

あぁおもしろかった、感動した、もの悲しい
そうしたエンターテインメントの後に起こりがちな感情が何もない。
掴み所がなく、言葉にできなかった

ようやく、考えがまとまったのは3日後。
3回のレム睡眠で、脳が情報整理してくれたことと、毎週愉しみに観ているテレビドラマが対比材料となり、シン・ウルトラマンの特徴を浮き彫りにしてくれた。


シン・仮面ライダー」の封切りは2023年3月と告知されている。
庵野秀明監督をはじめ、作品に関わるすべての人が健康で、無事、この映画が僕らの前に現れてくれれば、何も言うことはない。
少欲知足
私が好きな言葉です

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