HELLO! MOVIEで東京2020オリンピックSIDE:Bを見てきました(ネタバレあり)
気づけば観客は10人弱まで増えていた。
「シン・ウルトラマン」を観た際、G-SHOCKの正時報が鳴って映画の進行時間がわかってしまったので、今回「ぴぴっ」はオフにしている。
その結果、映画が始まってから終わるまでの間、いったいこの映画は、何処へいこうとしているのかが読めなかった。
幾度か「時計を見たい」という衝動に駆られたが我慢した。
映画の冒頭は「シン・ゴジラ」を彷彿とさせる早口の会議映像で始まる。1964年の「東京オリンピック」がゴジラのようなおどろおどろしい音楽で始まることに対する、パロディかと想った。
「もしかして、チネチッタの人がSIDE:Aとかけ間違えたんじゃないか?」
映画が始まって1時間ほど過ぎた頃、僕はこう考えていた。
「支えた側の視点」として、IOCと組織委の長く深い苦悩が描かれているが、それに加えて「アスリートの視点」と言えるシーンも、ある程度時間が割かれている。
日本チームがバトンを落とすとか、南スーダンチームの合宿は「SIDE:A」のネタではないだろうか。
「支えた側」の編集ならば、その一翼だったスポーツボランティア(以下、Field CastとCity Castを総称してボランティアと記述)も、どこかで出てくると思っていたが、皆無だった。
青シャツは物語の背景に映り込むエキストラに過ぎない。
スポーツの三領域として「する」「みる」「ささえる」という言葉があり、ボランティアは「支える」立場である。
「支えた側の視点」で描くと、わざわざSIDE:Bを別作品にするものだから、てっきり「支える」つながりで、ボランティアが描かれるものと早合点していた。
ただ、ボランティアを扱わなかったことは「半分、妥当」だと思う。
東京2020をやり遂げた最大の功労者は組織委の皆さんだ。
企業や自治体からの長期出向者。東京2020を支えたいと志願した臨時職員の方たち。それはオリパラの2か月間、ボランティアとして、職員の皆さんと接した実感である。
ボランティアは五輪記録映画に銘記するテーマではないと思う。もしボランティアの誰かを掘り下げれば、途端に映画がバラエティ番組になってしまう。
なにが「半分、妥当ではないか」かというと、IOCと組織委トップ、特定の人たちのトラブルや対立に多くの時間が割かれ、組織委現場職員の記録が皆無ということだ。
コロナ禍による、史上初の延期、反対渦巻く中での開催
分断と混沌の五輪
組織委会長の女性蔑視発言があり、組織委内の対立もありました・・
という映画である。
映画が終盤にさしかかった頃、こんなことを考えた。
この映画は誰が喜ぶのだろう?
いや、そんなことは意図していないのだ。
レガシーは当事者が望む形で残される。記録映画について、それは監督に委ねられている。
共感する言葉、笑えるシーンがいくつかあった。
3×3バスケの設営に当たった安田美希子さんが語った言葉は、この大会を支えることに賭けてきた人々の気概を代表していた。
選手村フード統括の紅林利弥さんが夢で見るトラブルを羅列している横で「リアル過ぎ」のツッコミが可笑しい。
開会式で起立した貴賓席、天皇陛下がバッハ会長に「おかけになってください」と促すシーン、HELLO! MOVIEの「天皇陛下に促されて着席」というナレーションに受けた。
徳仁天皇、優しいなぁ。日本人として誇りに思う。
今回初体験のHELLO! MOVIEは最高だった。
内容としては、視覚障がい者向けの副音声が入ったテレビ放送と同じだ。
ただ、それを実現している技術がすごい。
2時間の映画の間、ギガを消費しない
(ガイダンスでは機内モードが推奨される)
通信していないため、バッテリー消費率も5%程度とわずか
スマホのマイクから取り込んだ音に同期して、音声が流れるのだが、同期が外れたのは1度きりだった。
外国人が話す翻訳字幕を読み上げる、景色や人の様子を描写する。
情報量が程よくて、それも耳障りではない。
何よりよいのは、固有人名、場所などの固有名詞を言ってくれることだ。
バッハ会長や小池百合子都知事は顔を見ればわかるが、そうではない人も多い。
ショートフィルムを卒なくつないだ記録映画が、HELLO! MOVIEのお蔭で親切な物知りの専属ガイドと観に来た映画に変わった。
(おわり)
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