閉会式の日に登場したアイロン職人
8月8日
五輪閉会式当日
シフトはレジセンの早番(7:00-14:30)
午前中は、洗濯もののピックアップに行く選手がレジセンを通ってランドリーに行き来する。
閉会式に向かうシャトルバスは15:00頃から順次出発すると聞いている。
閉会式が行われる時間帯の国立競技場には雨の予報が出ている
お昼を過ぎると、大きなバッグを両手に抱えた選手たちが戻ってくる。
昼食がてら、ビレッジプラザで五輪土産を買い込んできたのだろう。
「バブル方式」で行われている東京2020では、選手の移動範囲は選手村と競技場を往復のみ。行きたい店へ自由に出かけることはできない。
唯一の買物ができるのが、選手村のビレッジプラザなのだが、ここには日用品と東京2020グッズしか売られていない
(Field Castは中に入れないため、見てきたわけではない)
日本独自の食べ物、家電製品、化粧品、サブカルチャーグッズ・・・
楽しみにしていた買物ができないのは、残念なことだ。
これが、生涯最初で最後の来日という選手も多いだろう。
選手も残念だし、日本の販売店の皆さんも残念。
誰も得をしていない。
若い人の間で流行っている「**しか勝たん」という言い回しを借りればまさに「コロナしか勝たん」のである。
本当の勝者など誰もいないのに、人と争って勝ち負けを決めたがる人が多いことが、東京2020で浮き彫りにされた。
それは「分断」と呼ばれた。
お昼を回った頃、レジセンに段ボール箱が運び込まれた。
中には簡易レインポーチが入っている。
予め想定されていたのか、なかなかニクい気配りだ。
箱を開け、一つを広げて見本として壁に貼り付ける
すると、選手たちが「僕にもくれ」「私には2つね」と言って集まって来た。
選手村の基本的な運用として「手渡し極力NG」があるので
「FREE!」と貼り紙をして、自由に持って行ってもらう。
しゃがんで2つ目の段ボールを開けていると、背後から何かが差し出された。
「This is for you」
と言ったかどうかわからないが、それは僕へのプレゼントらしい
2mmほど厚みがある名刺サイズの物体
どこかの街の夜景がプリントされているようだが、物体がエアキャップに包まれているため、正体不明
選手は物体と引換にレインポーチを一つゲットすると、すぐに自分の部屋に上がっていった。
特殊な電子部品だろうかとも思ったが、未だにこれが何だったのかはわかっていない。
ここ数日、選手たちから引っ張りだこだったのがアイロン。
晴れ舞台には、ぱりっとした衣装を着たい。
その気持ちは万国共通だ。
レジセンには貸出用のアイロンがいくつかあって、選手は自分の部屋で使って、レジセンに返しに来る。
閉会式が近づいてからは、一人でも多くの選手に使ってもらうため、貸出ではなく、レジセンそばのテーブルで使ってもらっていた。
ずっとさっきから、E国の青年が衣装にアイロンをかけている
E国の居住棟はここではないので、彼はアイロンを求めて、はるばるやって来たのだろう。
背筋が伸びた凜とした佇まい、微かにアルカイックスマイルを浮かべた青年は、プロのアイロン職人かと思うような熟練の技で、持参したトップス、ボトムス・・次々にしわを伸ばしていく
それはそれで見事なのだが、長い・・
次に使いたいと思っている選手が遠巻きにしている
だからといって、早くしてくれというのも違う気がする
ずいぶん長い時間をかけて仕上げた青年は、正装一式を大事そうに抱え、皆にお礼を言って引き上げていった。
閉会式に向けて慌ただしい選手たちとは裏腹、僕らサービス提供スタッフの出番はほとんどない。つまりヒマ。
早番のシフト終了14:30でぴたりと上がる。
できれば、閉会式に向かう選手たちを「行ってらっしゃい」と見送りたかった。
TPCを出る頃には交通規制が始まっており、いつもとは違う順路が指示されていた。
選手団を国立競技場に運ぶバスの第一陣が見えている。
沿道には、選手たちをひと目見ようという人々が待っていた。
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