気になるが気になる「気になる病」の人たち
♪この木なんの木?気になる木
名前も知らない木ですから♪
と歌うのは、昭和50年代に放送されていた日立グループのCMソング
ハワイを訪れた時、ツアーガイドさんがモアナルア・ガーデンにある木を指して「この木なんの木?」と問いかけると、日本人観光客がそのCMソングを合唱した。
まだインターネットもなく、CMのロケが何処で行われたという情報はない時代。
これが、その木だと誰も知らなかったのに「この木なんの木」と問われたら、日本人にとってそれはその木だったのである。
時は昭和。僕は会員管理システムのSEだった。
ユーザー部門のサカモト課長から相談を受けた僕ら情報システム部は、関係部署を集めて要求分析の会議に臨んでいた。
サカモト課長が課題を説明する。解決策の自案はない。
情報システム部側が、準備しておいた改訂案についてメリットと工数を説明する。
関係部署は「それしかないね」という空気だ。
どうですか、サカモト課長?
クライアント(お金を出す側)はユーザー部門。彼が判断する立場だ。
サカモト課長は「えっ俺なの」と一瞬戸惑ったように見えたが、少し物憂げな表情でこう言った
「費用対効果が気になるね」
「費用対効果」は自称エリートの決まり文句
会議で他人にアイデアを言わせておいて、後出しじゃんけん的に
「いい案だね。ただ、費用対効果がどうかだね」
と言えば、一気に全員のモラルを下げることができ、なおかつ「二度とこいつとは仕事したくない」と思わせることができる。
「費用対効果」とは
「投資額」と「得られる効果」を比較考量する分析の通称
効果には定量効果と定性効果がある。数値化できる売上げなどが定量効果。数値化できない満足度などが定性効果。
それらを調べたうえで、かかる費用と比べることが費用対効果
それは、気の遠くなる作業だ。
中央省庁や役所の職員が予算を立てる時、必ず行う作業であり、その作業が業務の大半を占める。そこがAIにより自動化されれば彼らの残業は劇的に減るだろう。
その膨大な作業を引き合いに出し、何もしない人が5秒で
「費用対効果が気になるねぇ」
と片づけたので、周りは怒りを通り越して力が抜けてしまった。
時は令和。僕は録画しておいたニュースショーを観ていた。
"最低賃金が31円上がりました"
厚生労働省の審議会が、今年度の最低賃金の引き上げ額を31円とする目安を決定したニュースが紹介される
MCがどうですか?と話題を振り、コメンテーターが応じる
↓↓
「物価が上がってますから、本当に上がったのか気になりますね」
気になる?
それで終わりなの?
その先はないの?
意見を求められた時に「気になる」というポジションをとる人がいる。
考えているぞ
問題意識あるぞ
多面的にみているぞ
自分は、なにも考えていない「気にならない」人とは違う!
そうアピールすることで、自分が何者かであると示したいのだろう。
それは、人を萎えさせる
もちろん、萎えない人もいる
いずれにせよ「気になる」という言い逃げは建設的ではない
いつの世にも「何かを言っているようで、何も言っていない」人がいる。
「気になる病」の人もその仲間だ。
「気になる」アピールは要らない
何も言えないならば、ムリに何も言う必要はない
自分のなかにある真摯な言葉に人は共感する
♪この木なんの木気になる木
見たこともない木ですから
見たこともない花が咲くでしょう♪
件の日立CMは、こう結んでいる
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