パリに「東京、ハードル上げすぎっ」って言わせたい
五輪が始まる前に思い描いていたボランティアのイメージと、実際のそれは違っていた。
転機となったのは、開村後に読み返した選手村のField Castマニュアルに書かれていた一文だ。
(以下引用)
積極的にチームのみなさんとコミュニケーションをとりながら、自身の得意分野を活かし、チームの活動にあたります。
(引用おわり)
「用語集」は自らの最大の得意分野。
「選手村用語集」を思い立つことができたことで、五輪では幸せな時を過ごすことができた。
それは、活動が始まる前には想定していなかったことだ。
パリの人たちに「東京、ハードル上げすぎっ」って言わせたいですね!
2019年春、面談の席で応募者とこんな話しをしていた。
五輪ボランティアのサービスレベルを、日本開催の東京2020で一気に引き上げたい。
4年後に開かれるパリ大会のボランティアたちから
「ここまでやる?ムリムリムリムリ!なにしてくれたの東京」
と言われるくらいに・・
だが、実際に選手村活動が始まってからは、そんなふうに想っていたことすら忘れていた。
ムリもない。
僕が思い描いていた姿は「平時の大会」であり、今はそうではない。
ハードルを高くする以前に、トラック自体が凸凹なのだ。
東京2020は、後世に「あの時、大会が行われたこと自体が奇跡」と言われるかも知れない。
今は大会ができたこと、やり遂げることが僕らのハードルであり、それを高くしようという空気ではない。
五輪閉会式でバッハ会長がボランティアへの感謝に言及し、メディアは選手団も感謝しているという論調となっていた。
僕はそれを素直に受け取れないでいた。
これくらいで感謝されていいのだろうか
自分自身、サービスで感動してもらったという体験はない。
それどころか、質問に対して誤った情報を伝えたこともあった。
我々のサービスレベルについて、五輪選手団による芳しくない意見が風の噂に聞こえていたが、それはとても「遠慮がち」というか、抑制されたものだった。
しかし、それは至極真っ当な意見だったと想う。
もちろん、どれだけベストを尽くしたと想っても、人それぞれの不満は後を絶たないだろう。
ましてや、ここは三ッ星ホテルではなく、ルールとガイドラインに沿って運用される選手村なのだ。そのルールに慣れていない地域の人は不満だろう。
ポケトークが威力を発揮することは大きな収穫だった。
僕の英語は「中学生レベル」
手に負えくなった時の保険として、2年前にこの翻訳機を買ったのだが、まさか、ここまで使えるとは想わなかった。
僕が「Talk to this」とポケトークを差し出すと、どの選手も気さくに応じてくれた。
「面倒だから、それはやめてくれ」ということが一度あっただけ。
オランダ選手団がやって来て、僕がNETHERLANDS に切り替えていると「それを僕に?」と声かけてくれた選手。嬉しかったな。ジョークが言える人は優秀だと思う。
ある選手は、マスクを外して熱弁した。
マスク越しでは機械が音を拾えないと想ったのだろう。
彼が話す間、僕は差し出した左手に、飛沫の感触を感じていた。
何処のFAよりも、選手団との会話機会が多い選手村にアサインされたことは幸いだった。
ポケトークを使ってみたいというField Castが多く「ポケトーク講座」や「選手村ポケトークマニュアル」をつくり、仲間に喜んでもらうこともできた。
五輪を終えて、仕事にも、猛暑の立ち仕事にも慣れた。
これから始まるパラリンピック(Paralympic Village)では、皆さんとの調和を大切にしよう。
できれば、VIL全体の運営に貢献したい。
イノベーションができるならば、一石を投じたい。
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