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2022年11月18日 (金)

転倒したライダーの足が反対を向いていた

つづら折れの左コーナーを終えて体を起こし、すぐにやってくる右ヘアピンに備えようと顔を上げた時、前方の路肩に1台のバイクが横たわっているのがみえた。

尋常ではない事態を察した僕らは減速して路肩にバイクを停める
ライダーはというと、路肩の溝を超えた茂みに横たわっていた
転倒後、路面を滑り土手に叩きつけられたのだろう
バイクは黒のRZ250。ついさっき、僕らの前をかっとんでいったライダーだと容易に想像がついた。

大丈夫ですか?
恐る恐る声をかけると、ライダーは右手を挙げた
生きていることにとりあえずほっとした次の瞬間、僕は見てはいけないものを見た気がして目を背けた
右足が、通常付いている方向とは違う方を向いていたのだ
これが、救急案件であることは間違いない。
当時、普通救命講習を受けたことはなく、なんの知識もなかったが、素人がけが人に触るのはよくないと思われた。

相棒のサトウ君が倒れたRZ250を起こし、ガソリンが漏れていないかを確認する。周囲に火気はないが、事故現場では引火が怖い。
次に路上にオイルが漏れていないかを確認する。路上のオイルは後続車が滑って二次災害につながる。

2サイクルエンジンはガソリンとオイルを混合して走る。
RZは右サイドカバーの内側にエンジンオイルタンクがある。バイクは右を下にして路上を滑っていたが、サイドカバーは外れておらずオイル漏れはなかった。
こうしたチェックポイントは、当時入り浸っていたBLUENOTEで店主やバイク仲間たちから聞いた、サーキットや峠の話で自然に見についていた。


天気のよい日曜日の三瀬には、多くのライダーが訪れる。
すぐに、3台のバイクが通りかかり、バイクを停めて救助の輪に加わった。

携帯電話がない時代。
確かあと少し下れば、ログハウス風の喫茶店がある。
そこまで行けば電話が借りられるはず。
負傷者スズキさん(仮名)の保護、後続車への注意喚起を4人のライダーにまかせて、第一発見者の僕が救急車を呼びに行く役割を買って出た。

力強くキックペダルを踏んでRZ350のエンジンをかける。
今僕がすべきことは、確実・迅速に電話のある所まで行き、救急車を呼ぶことだ。
急いでいるが、慌ててはいけない
ただ、なにかに追われている訳ではない
焦燥感はなく、使命遂行の過程に身を置く高揚感があった


それでも経験したことのない気負いは、僕の判断を鈍らせた。
先を急ぐ気持ちがアクセルとブレーキのバランスを狂わせて、何度かコーナーで対向車線にはみ出しそうになる。
見通しのよい直線では、できるだけ加速した。今こそがRZ350の性能を正しく発揮する時だ。

日曜日の午後、たどり着いた喫茶店は閑散としていた。
店主が控えるカウンターまで進み入り「けが人が出ているので救急車を呼びたいんですけど」と僕の使命を説明すると「じゃ、あれで」と店主がうすいピンク色の公衆電話を指さした。

僕はまだ若く「身銭を切る」という感覚を身に着ける前だったが、この使命のために使う10円は惜しくないと考えていた。
しかし、店主が鍵を持ってきて、緊急通報をかけられるようにしてくれた。


バイクの転倒でけが人が出ています。救急車をお願いします。
意識はあります。足が外れているいるように見えました。
場所は三瀬峠の県境から福岡側に下った5つ目あたりのカーブです
今、ふもとの喫茶店からかけています。これから僕は現場に戻ります

オペレーターの質問に応じて、必要な情報を伝え終えると、続いてスズキさんの自宅に電話をかける。
現場を離れる時「どなたか連絡しましょうか?」と自宅の電話番号を聞いておいたのだ。

コロナ禍で三年ぶりのさとがえり(目次)

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