世界初のマイボトルマラソン、世界初の美しく尊いランナーたち
配置に着きパイロンを並べ終えると、先頭のランナーが来るまでまだ30分ほどあった。
トラスコ湘南大橋からは、雪を頂いて真っ白になった富士山が見えている。
■トラスコ湘南大橋
相模川の最も河口寄りに架かる国道134号の橋がトラスコ湘南大橋(全長698m)
2010年に架け替えた際、日本の橋で初めて愛称に命名権(ネーミングライツ)を採用。
東京都港区に本社を置く機械工具卸の TRUSCO トラスコ中山が命名権を取得。
5年契約で、2020年4月からは3期めに入っている。
箱根駅伝のコースであり、湘南国際マラソンも毎回コースとして使用。湘南では往路7km、復路29kmにあたる。
湘南国際マラソンは第1回東京マラソンの翌月、同じ2007年に始まった市民マラソン。
箱根駅伝のコースであり、観光地湘南の海沿いを走る国道134号線を封鎖しておこなう。
コースから富士山が見えるのは「走っていて気持ちがいいだろうな」と思う人もいるが、実際に走った感想としては、景色が変わらず辛い。
このコースは、ほぼ一直線の走路を往復する「1way折り返しコース」
東行きでは「江ノ島」西行きでは「富士山」が遠くに見えている。
遠くに見えている目標は、地面を走っているとなかなか近づいてこない。意外とこれがつらい。
僕の理想コースは曲がり角の多いコースだ。今は辛くても曲がり角の先によきものが待っていると信じて頑張れる。
トップアスリートにとって曲がり角はタイムロス要因だが、ど素人!ランナーにとっては気分が変わるプラス要因だと考えている。
第17回大会は「世界初のマイボトルマラソン」として「マイボトル給水システム」が採用された。
通常の市民マラソンではランナーはドリンクをエイド(横浜マラソンの場合18か所)でもらう。
この大会では、ランナーが400mlのマイボトルを持って走り、200mごと200か所(蛇口数3,500)に設営された給水タンクから自分で水を汲む。
走る側に立てばタイムロスが多くなるのでは?と考えていたが、出走したランナーの意見をチェックしてみると、そうでもないらしい。
400mlのボトルを持っていれば、そう何度も「水を汲む」必要がない
エイドの渋滞によるタイムロスがなくなる
路上にゴミが落ちていない
この取組はいいんじゃないか?
この取組がこれから、他の大会に波及するのではないか?
と思えたのは、実際に目にしたランナーの振る舞いにある
トラスコ湘南大橋を渡り終えた往路7.8kmでランナーに拍手を送っていた時のことだ。
1人のランナーがボトルを落としてしまった。ボトルは地面に転がり後続のランナーはそれを避けて走っていく。
ランナーが切れる一瞬を狙ってボトルをコース外に出そうと、じわじわと近寄っていた時だ。
ひとりのランナーがボトルを拾って走って行った。
最後尾のランナーが行き過ぎるより少し早く、復路のランナーがやってくる。
僕らは道路を渡り復路29km地点に持ち場を変える。
すぐ手前には給食エイド(コース上6か所)があり、バナナを配布していた。
このバナナはけっこう美味かったらしい。「生涯で食べたなかで一番美味かった」という意見もあったくらいだ。そう言われると、僕も食べてみたかった。
市民マラソンにおいて、エイドでバナナを配ること自体は普通だ。
ただそれは、コロナ禍前ならば「皮を剥き、カットしたバナナ」
今回は「皮を剥かず、一本ままのバナナ」
眼の前を通り過ぎるランナーはバナナを食べながら、食べ終わった人は皮を手に持って走っている。
コース上にはゴミ箱は設営していない。
「これいいですか?」とボランティアにゴミを渡すランナーはいない。
ランナーはバナナの皮を持ったまま、トラスコ湘南大橋へ登っていく
人は「いい人モード」に入れば、いい人になれる
これは以前、ランニング雑誌の編集者に言われた言葉だ。
世界初のルールの下に集い、そこに身を置いた方たちは、ルールとマナーの鏡と呼べる2万人のランナーだった。
世界初の美しく尊いランナーたちである。
運用ルールにより「声出し応援」はできない
(屋外でマスク着用をしているのに声を出せないというのは疑問だ)
すべての人に拍手を送った
10km走ったくらいの筋肉痛になった
いつもならば、最終ランナーにつづいて警察の規制車両が通り過ぎると、道路の原状復帰(ゴミ拾い)となるが、ゴミは1つも落ちていない。パイロンを片付け交通規制を解除して任務を終えた。
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