交通事故現場の次に向かったチェックポイントは「一方通行出口」
事故現場から少し歩くと病院があり、数年前に「ちょびっと」の同窓会で行った居酒屋がある。
はさまれた路地は、ここが一方通行の出口で進入禁止の標識が立っている。
路地には街路樹が並ぶ。
進入禁止の標識はわりと高い位置にあるが、街路樹の枝葉は刈り込まれていて標識が見えている。
学生時代のある日、僕はなんの疑問ももたずバイクでこの路地に入っていった。
すると、路地の出口に2人のお巡りさんが待っていた。
「ここ、一方通行だよ」
進入禁止の標識を見た覚えがない。
それでもお巡りさんがここで取締をしているということは嘘ではないだろう。
進入禁止の標識を見逃したのか・・
かつてこんなことはなかった。狐につままれた気分だったが青切符にサイン。
1日の食費が500円の僕にとってその半月分にあたる反則金は痛かったが、やってしまったことは仕方がない。すぐに銀行からお金をおろして支払いを済ませた。
「兄ちゃん、さっき警察が来ちょったぞ」
数日後、僕が曙荘に帰ってくると資材置き場のあんちゃんに声をかけられた。
「婦女暴行か?」
「未遂はいかんぞ、ちゃんとやらんと」
コンプラのコの字もない時代だ。屈託がない。
警察に事情を聞かれるような悪いことはしていない。
心当たりがあるとしたら、あれか・・
「連絡ください」
玄関ドアにはさまっていたメモに電話すると、交通課の担当者が出た。
「祖原*丁目での交通違反についてですが、反則金はどうされましたか?」
あの翌日に支払いは済ませていますよ
「・・・そうですか。実は標識が見づらいという意見がありまして」
そうなんですか。だとしたら、お金は返してもらえるんですか?
「いや、払ってしまったものは、もうダメなんです」
ぬか喜びだった
払ってしまったら、もう取り消せないなんて
大人の世界はそういうものなのか・・
僕にとって、半月分の食費なのに
すぐに、現場を見に行った。
路地の入口には街路樹の枝葉が茂っていて進入禁止の標識を覆い、標識は隙間からわずかに見える程度だった。
進入禁止の標識が見づらい一方通行を逆走させておいて、出口で待ち構えて取締とは。
警察の姿勢に不信感が生まれ、それを払拭するまでにはしばらく時間がかかった。
現在、進入禁止の標識は変わらず高い位置にあるが、街路樹の枝葉は短く刈り込まれており(ー)の標識は、はっきり見えている。
ある意図をもって剪定が行われていると思える潔さだ。
ここも記念に写真を撮ろうとiPhone13miniを構えた
ただ、標識のとなりに推定20代の女性が一人ずっとスマホを触っている
しばらく待った。でも彼女はスマホから顔を上げる気配がない。
「すみません、ちょっと写真撮らせてもらっていいですか」
言おうとして思いとどまった。
「え、私を撮るの?」と誤解されるかも知れない
フォトスポットでもない場所だけに説明が難しい
写真は諦めた。
この時のうっすらとした後悔が、数日後、意外な形で表に出ることになる。
リヤカー通りに戻り、西(藤崎の方)に向かって歩く
ここらが学生の頃のホームタウンだ
バイト代が入ったとき外食にきた「レストランむらた」はもうない。
店主の娘さんを取材させてもらった高田書店はかつて何処にあったかもわからない
自炊の食材を買っていたスーパー「サニー高取店」だけが、今も同じ場所にあった
サニーを過ぎて2本めを右折した路地にあったのが、ロッキングチェア
漫画「750ライダー」(石井いさみ作・ 2022年9月17日逝去)を読んで以来、大学では行きつけの喫茶店をもつことを目指していた。
コーヒーを飲みながらバイク好きのマスターとなんの変哲もない会話を楽しみたい。
そう夢見ていた僕が大学2年生の夏に見つけ、それから卒業までほぼ毎日通った。
ここではロッキングチェアとの出会いを書いておきたい。
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