原付で一時停止無視の軽トラにはねられて救急搬送される
「昔住んでいたんですけど、部屋の中を見せてください」
もちろん、そんな訪問ができるわけもない。曙荘を後にして次の目的地に向かって歩き出した。
祖原の交差点で信号待ちしていると、赤い車体に「chari」と書かれた自転車が横切った。
見るからに、僕が探していた貸自転車だ。
あ、あるんだ、いいなぁ・・
後日、博多の知人から聞いたところによると「チャリチャリ Chari Chari」というサービス。
運営する「neuet(東京都)」のホームページによると、東京・名古屋・熊本でも展開している。
(東京は文京区の一部のみ)
東京のセブンイレブンなどに置いている「docomo bike share」との提携関係はない様子。
docomo は、共通IDで各地のサービスが利用できるのだが、博多には提携サービスがない。
料金は1分6円(電動1分15円)と、利用単位が細かい。
※docomo は電動のみ 30分165円
「博多の人は1kmくらいの距離でも利用している」という。
祖原の信号から国道263号線の一本裏通りへ。
この道がアパートから大学へ向かうバイクの通学路。
しばらく行くと信号のない交差点に差し掛かる
交差する道は左からの一方通行で一時停止義務がある
ここが、次の目的地。一度、じっくり見ておきたかった
大学二年から三年に上がる春休みのことだ。
朝の6時頃、原付のYAMAHAパッソルに乗ってアルバイトに向かっていた。
喫茶店ロッキングチェアで知り合ったスズキのおばちゃん(仮名)に紹介してもらった土方のバイトだ。
僕の苦学生ぶりは常連さんの知るところになっていて、スズキのおばちゃんも時々「マスター、moto君にカレーば」と言って、カレーを奢ってくれた。
土方は日給が高いが、紹介でもなければ、学生が仕事をもらえることはなかった。
何度か、土木工事店の列に並んだことがあるが、僕のところまで仕事は回ってこなかった。
「今日は稼げるぞ」
いそいそとバイクで向かっていた朝、この交差点で車にハネられて救急搬送された。
事故の相手は軽トラ
青果店の佐藤さん(仮名)は一時停止を履行せず交差点に入ってきた
僕が気づいた時には、左側の目前に大きく白い軽トラの姿があった
互いに徐行もしていない、出会い頭の事故だ
次に気づいたのは、数分後
混濁した意識の中で近所のおばちゃんらしき声が聞こえた
「大丈夫かねぇ」
「救急車、遅かね」
この時、僕はこう考えた
そうか、あの車とぶつかって意識を失ったのか
でも生きているな。救急車も呼んでもらっているらしい
ならば、ひと安心だ
目を開けようと思えば開けられるのかも知れない
だが、ここで目を開けると事態が好転するわけではない
心配していただいて悪いが、もう少し意識不明のけが人でいよう
次に目が覚めた時、そこは吉村病院のベッドの上だった。
吉村病院は修猷館高校のそばにある病院。事故現場から救急車ならば5分かからない距離にある。
事故からどれくらいの時間が経ったのかはわからない。
既に治療は終わり、状態は安定していたのだろう。
目が覚めたのは個室の病室だった。
手元にあったボタンを押すと看護婦さんがやって来た
「ご実家には連絡済みです。他にどこか連絡するところがありますか」
そう聞かれて、アルバイトを紹介してくれたおばちゃんに「事故に遭い行けなくなった」と連絡してもらった。
個室で寝ていると、しばらくして青果店の佐藤さんがやってきた。
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