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2023年1月 8日 (日)

お昼は蒸籠蒸しのはずだった

防塁の交差点には藤崎郵便局があり、そこから海に向かって伸びる道に目をやると、その延長線上に福岡タワーが見える。
「よかトピア」のシンボルとして建てられた福岡タワーは*年の落成なので、僕らが学生の時分、そこには空しかなかった。
今の学生たちは福岡タワーに向かって通学する。希望に満ちた者には美しい画角だろうし、失望に溢れた者にとっては、重苦しい光景かもしれない。

僕は福岡タワーを遠くに見て、こう言った
「あぁ、腹が減った」
井之頭五郎ならば、ここで三段ズームの絵になるところだ。

朝から何も食べていない。出発間際に空港ロビーのサンドイッチスタンドにも寄らなかった。だから腹が減る。常日頃から朝昼は食べていないので、ファスティングには慣れているのだが、時間と距離を超えていけば人は腹が減るものだ。

「よし、店を探そう」
とは言わなかった。ただ、学食のオムライスを思い出していた。薄味のケチャップライスに、ライスが透けて見えるくらい薄く焼いた玉子が乗っている350円(当時)のオムライス。いつもならば、170円のカレーと決まっていた僕にとって月に一度の愉しみだった。


当初の計画ならば、福岡空港に降り立ち、博多駅のコインロッカーに荷物を入れたら、天神で蒸籠蒸しを食べることになっていた。
三年ぶりの博多だから、ここはちょっと贅沢しても罰は当たらないだろう。
「天神 蒸籠蒸し」で探すと、なんと本吉屋の支店が岩田屋にあった。

本吉屋
【もとよしや】 蒸籠蒸しの元祖
本店:福岡県柳川市 柳川駅の近く
柳川・川下りの終点そばに沖端店がある

かつて、アベックが柳川に川下りに行くと、その流れで本吉屋というのが定番コースだった。
(考えには個人差があります)
今は、特せいろ蒸しが 4,700円。昨今のうなぎ高騰を受けて、なかなかいい値段だ。
でも、三年ぶりなので3で割れば 1,567円。それならば罪悪感が薄れる(罪悪なのか^^;)

ところが、博多から地下鉄に乗った途端、今日の第一目的である「黒田庵の今」が先決と想い、西新まで乗ってしまった。

9月初旬の福岡は、まだ十分に真夏の体。
気温は30度を超えている。暑い。なにもかもがめんどくさく思える。
「学食にオムライスが今もあるのか?」を知りたい。でも面倒だ・・・

次の瞬間、僕の足は福岡タワーに向いていた
この時、どんな心理が働いたのかは思い出せない
想像するならば、高齢の僕が学食に乗り込むというチャレンジにより、自分を自分で褒めたくなるかもしれないという報酬を見出していたのだろう。
なにもしない自分より、なにか面倒なほうを選んだ自分を褒めたくなる
そんな気がしたのだと想う


学食が入っている西南会館は閑散としていた。
このビルは僕らが通っていた頃のものではない。
西南学院は100周年を境に、大半の建物が何らかの変更を受けた。
今も大学より送られてくる会報誌で調べたところ、次のとおりだ。

■建て直し
1号館  2号館  チャペル(2008年3月完成)  大学院  西南会館  6号館  自然科学館 

■増築
図書館 

■新築
法科大学院  クロスプラザ  博物館  コミュニティセンター  インターナショナルハウス 

■そのまま
3号館  4号館  5号館  体育館  本館 


ちょうど3人連れの男が入っていく。後に僕もつづく。彼らは「おれ、カレー」とか言いながら券売機で食券を求めてから、角を曲がっていく。
ここで過去の記憶を紐解いた。当時は食券ではなく現金だったが「非会員の方は+50円をお支払いください」といった張り紙があったと想う。
ここでしれっと食券を買って入ったら、カウンターのおばさんに「なんか歳の行った学生やね」と想われそうだ。

食券は買わずに3人の男たちの後を追った。

コロナ禍で三年ぶりのさとがえり(目次)

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