奥多摩参考記録【13話】期せずして憧れの「バリバリ伝説」青梅街道を歩く
10:53
次の目的地、奥多摩温泉神社まで、事前の調べでは4.5km。
右腕をくるりと後ろに回し、パックのポケットからOS-1を取ると、ひと口飲んでから歩き始める。
奥多摩湖は山間部を沈めてつくった小河内ダムであり、湖面は山が取り囲んでいる。
従って、奥多摩湖に沿って整備された国道411号線(青梅街道)は山間部を縫うように走るためトンネルが多い。
小河内神社のバス停からスタートすると、いきなり1本目のトンネル。けっこう長い。
トンネルを抜けるとそこは雪国ではなく、赤い橋だった。
峰谷橋(みねだにはし)は峰谷川が奥多摩湖に注ぐ際(きわ)にかかっている、赤い鉄骨が美しいアーチ橋。
ここは、麦山浮橋を渡って三頭山へ向かう登山口であり、無料の駐車場がある。
ちょうどチャーターバスが着いて、十数人の若者たちが降りて来た。
彼らはTシャツ姿で荷物すら持っていない。山歩きや散策というよりは「お昼ごはん休憩」の風情だ。
「かったりー、ソーメンなんか食いたくねぇ」
けだるそうな彼らの口に、勝手に台詞を当てはめながら、小河内ダムまで僕を乗せてくれないかなと考えていた。
10:56
少し歩くとまたトンネル。そのトンネルを抜けると右手に湖面が開けた。
あのあたりが小河内神社か?
足を停め、湖の先、森の中にあるであろう神社に向かって、二礼二拍一礼の遠隔参拝。お賽銭を納めることもできなかったが、この参拝は、この日のうちに大きな御利益があった。
少し歩いてはまたトンネルの繰り返し。トンネル率は50%くらいか。リニア中央新幹線の86%に比べると少ないが、時速5kmでトロトロ歩く僕にはちょっと多い。
トンネル内は最低限度の照度は保たれているが、それは、ヘッドライトを装備しているクルマが通るためのもの。舗道は人が1人通れる程度に白線が引かれているだけで段差はない。センターラインは何度か引き直されたのか白さを保っているが、舗道を区切る白線は排気ガスで煤けている。それはもはや「灰線」だ。そのすぐそばをクルマが通り抜けていく。
しかも、向こうから来るクルマがけっこう飛ばしてくる。
あのスピードで跳ねられたら、ひとたまりもない
こわっ
それは僕が想うところだが、クルマの運転手にとっても同じだろう。
あいにく、今日の服装にはリフレクター、つまりヘッドライトを反射する装備がない。
そこで、クルマがトンネルに入ったタイミングでiPhoneのライトを付ける。「人がここにいるよ」と。
運転手はそれで僕に気づき、オーバーなくらい俊敏にハンドルを切って避けていく。
「こわっ!こんなところ歩くなよ」と想っただろう。
山岳遭難者の体験記に「救難ヘリコプターから"近づいたらライトを点滅させて"と言われていたが、ヘッドランプを持参しておらず、代わりにスマホのライトを付けた」とあった。
ロック画面からタップ1つでオンオフできるiPhoneのライトは、まさに命を守る機能だと知った。
11:13
かぞえて6つめは室沢トンネル(215m)けっこう、長い。そして暗い。
ウェストポーチから取りだしたiPhoneをしっかり握りしめ、気を引き締めてから入っていく。
青梅街道が走る奥多摩湖沿いのトンネルは、後に直線距離で整備されたものであり、その側には湖面に沿った旧道がある。
側道(旧道)は地図には載っていないが、坑口の脇にそれらしき入口を見ることができた。恐らくその何処かで「仮面ライダー」第1回「怪奇蜘蛛男」編が撮影されたはずだ。
小河内ダム堤防につづく道では、トンネルは室沢トンネルが最後。ここから小河内ダムまで湖沿いの心地いい景色を望みながら歩く。
散歩者にとって気持ちがいいということは、ドライブに来ている人にも同じ。
さっきから、バイク、スポーツカー、中にはスーパーカーがカッ飛んでいく。
幌を開けたオープンカー、青い空に鮮やかな赤にリペイントした初代NSXが映える。
そうか、ここが青梅街道なのか
カッ飛んでいくバイクやスポーツカーをみていて、名前と現実が一致した。
学生の頃、博多で読んでいたのが漫画「バリバリ伝説」
その舞台として名前が出ていたのが青梅街道と奥多摩周遊道路。東京にあるらしいそのワインディングロード(曲がりくねった道) 巨摩郡と秀吉がバトルする道を1度走ってみたいと想っていた。
今日は自分の足で歩いているが、いつか、クルマで来よう。
そしてトロトロ走ろう 幌を開けて 何も考えないで往こう
11:34
小河内神社のバス停から歩くこと40分
「奥多摩温泉神社」と書かれた札がある階段の麓に着いた。
往路のバスで、車窓から「熱海(あたみ)」バス停を過ぎた右手に、この看板があることを確認していた。
さぁ、温泉神社だ。
そう想って、この階段を一気に上ると、急激に心拍数が上がった。
階段を上りきったところで、立ち止まり、息を整える。
午後から上る「サス沢山」は急な上りだという。大丈夫だろうかと不安が頭をよぎった。
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