奥多摩参考記録【26話】滑落がほぼ無傷で済んだ理由
つい先ほど起きた出来事の輪郭が、時を追うごとに情緒的な側面を引き立たせ、僕に恐怖感を示唆している
滑落しているその時は「怪我を負わずに滑る」という目の前の挙動に集中しており、怖いと思うヒマはなかった
安全な観光地の風景に溶け込んだ1人の行楽客となった今、数分前に自分が置かれた立場の異様さに身が震える
もしも、切り立った崖を滑り、立木に激突していたら
鋭利な切り株や、ガラス片のような異物で怪我を負っていたら
そう考えずにいられないし、考えるとぞっとする
滑落したルートがザレ場(小石や砂を敷いたような場所)ではなく、枯れ葉が敷き詰められた林床だったことは不幸中の幸い
誰かが時間をかけて、そこを整備してくださったのであれば、その方のおかげだし、自然の所業ならば、この地を守る神様に感謝しなければならない
境内の参拝は叶わなかったけれど、奥多摩湖越しに手を合わせた小河内神社の神様に救われたんじゃないだろうか
もしも、歓迎できない障害物があって、ひどい怪我を負っていたら・・・
自省のための振り返りは、いずれ必要だが、今は怖すぎる。思考を止めるスイッチを入れて、一旦、この場では忘れることにした
入山前に「スタート」しておいたガーミンForeAthleteの計測をここで「終了」して「保存」
この時、この記録にどのような意味があるのかは理解していない
山行を記録したヤマレコ(スマホアプリ)は途中で止めてしまっていたが、その後の滑落ルートを手元のGPSウォッチが記録していることには思い至らなかった
※GPSデータによる検証は【検証編】に掲載
13:55
小河内ダム堤防道路を渡り、小河内ダム休憩所に戻ってきた
サス沢山(さすざわやま)登山は上り 1:20 下り 1:00 予備を含め 3:30 をみていたので、予定した「行程」より、3時間近く早い。
家を出た時には「日が暮れるまでには帰りたい」と想っていた。
思いのほか、早く帰れる。小学生の頃、お昼で帰れた土曜日が、こんな気分だったと想う。
「こんなに早く帰れていいのかな、これから何をしよう。とりあえず、岡八郎は見ないと」
そんなことを考えながら、2.3kmの家路を歩いた。
滑落の評価が定まらない
日が高いうちに帰れる安堵と、失敗の苦渋が交錯して渦を巻いている
休憩所には、午後からの日差しが照りつけていて、人影はまばら
さっきまでいたドライブ客たちは、もう次の目的地へ向かったのだろう
当初行程では、帰りのバスは奥多摩湖発 16:48 を予定していた
現在時刻で「乗換案内」を検索すると、次のバスは 14:16 その次は 15:43 1時間半も間が空く。念のためにバス停の時刻表も確認したが、情報は一元化されていた。西東京バスは侮れない
ここで、これから2時間を過ごすのは難しい。
早めに奥多摩湖を後にして、手を合わせる祈るだけの時間しかとっていなかった「奥氷川神社」を、ゆっくり散策することにしよう。
20分後に来る次のバスで往くことに決め、奥多摩土産を買おうと決めていた「奥多摩水と緑のふれあい館」へ急ぐ
めざす土産店が最上階にあることだけ確認するとトイレに直行。
まずは手を洗いたい
日々の暮らしに手洗いという習慣が親しんで久しいが、これほど、それを強く望んだことはない。そして、こんなに洗い甲斐のある手洗いは、いつ以来だろう?
右上に視線を上げて、過去を振り返ってみたが、該当するシーンは検索できなかった
らせん上のスロープを上り、3階のパノラマショップ「ブナの森」へ
小物から食品まで、思いのほか品揃えが豊富で、店内を一周しても当たりがつかない
お店の方に「食べ物で、奥多摩名物と言えば何ですか?」と尋ねて、ようやく1つに絞り込んだ
売店のとなりにはレストラン「カタクリの花」
店名のカタクリとは、その美しい姿から「春の妖精」と呼ばれるユリ科カタクリ属の多年草。
今日登るはずだったサス沢山の連山、御前山はその群生地として愛好家に人気が高い。
観光ガイドでその名を目にした時、袋の上から押すと歯が浮くような感触がある粉を想像したくらいで、僕はそれが草花だとは知らなかった。
この時「小河内ダムカレー」のことをすっかり忘れていた。
もしも覚えていれば、学生の頃「カレーを飲んでいる」と言われた僕ならば、このわずかな時間でも果敢に店の暖簾をくぐっただろう(暖簾はないけど)
| 固定リンク | 0
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 近くて便利 賑わいを感じるノース電停からの階段下(2024.12.03)
- 羽田からユニフォーム サテライトとバスラウンジでこんがらがる(2024.12.02)
- 旅にサッカー観戦に役立つ東京マラソンの簡易リュック(2024.11.22)
- 短い旅に好適なCABIN ZERO を手に入れた(2024.11.21)
- Jリーグ日程の発表からピース旅が動き出す(2024.11.03)
コメント