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2023年7月13日 (木)

奥多摩参考記録【19話】初登山の入山から14分で決めた「勇気ある撤退」

13:07
蜂をやり過ごした先は、山道が少しだけ開け、土道になっている路の左側に丸太ん棒がいくつかごろんと横たわっていた。
休憩場所として、先人あるいは東京都の方が設えたのだろう。
少し早いけれど(まだ登り始めて10分だった)先人のお心遣いに応えて、ここで最初の休憩を摂ることにする

今ここで椅子取りゲームのレクレーションが行われたら、誰もがここに座りたいだろうという特等席に陣取る。
なぜなら、僕はここでたった1人だったから


何分に一度の間隔で休憩を摂るといったことは特に計画していないが、30分に1度くらいは休まないとカラダに悪いとは想っていた。
OS-1を飲みながら、ぐったりと地面に視線を落とすと、数匹の蟻が寄ってきた

クマのことはもう忘れていたが、ここは本来、蜂や蟻、他にもいろいろな動物と植物の生きる場所なのだ。
長居は不要だ
そう想って立ち上がった時、1本のペットボトルが丸太の隙間にねじ込まれているのが見えた。それは「たまたまパックから落ちました」という体ではなく、誰かがここに横着な意志を持って捨て置いたように見えた
ここで僕は、このゴミを拾っていくのが「山男の道」だろうと考えた
だが、思い直した。今の僕が置かれた状況は楽観的なものではない。
自らの安全を守り、無事にこの行程を終えることに暗雲が漂い始めたと感じている。
「山男」の気概は、この次のココロにすることにした。


丸太の休憩所を出ると、山道は登山者の心を折る作戦に出た
先ほどまでの登りもきつかったが、さらに急峻さを増した
そして、何より山道と獣道の境界が曖昧に溶け合っている

さっきまでの道標はどうなった?
ここから、登山者の領域ですから、素人はここでお帰りください
垂直とは言わないが、体感的には50度くらいに見える急峻な山道が僕に語りかける

「勇気ある撤退」
という言葉が頭をよぎり始める
僕のようなど素人!登山者が使うのはおこがましい言葉だ
ベテラン登山者が聞けば、笑うかも知れない

これくらいのことで撤退するのか
ここまで3000m登ってきたわけじゃないから、止めたっていいじゃないか
2つの屹立とした感情の狭間に、僕は揺れた

このまま、この境界線が曖昧な道を上り続けることへの不安はない
なぜなら、僕にはiPhoneとその中には「ヤマレコ」という強い味方がいる
スタート地点で「登山を開始」にタップしておいたので、今も僕の現在地はしっかり捕捉されているはずだし、ルートを外れた時にはプッシュ通知が鳴る機能もある

ただ、体力が不安だ
マラソンに向けて400kmくらい走り込んでいる時ならば、これほど心拍数が上がらないと想うが、コロナ禍以降1mも走っていない脚では、この10分ほどの上り坂で息が上がっている(ガーミンForeAthleteの計測では、BPM141を記録していた)

なんとか、サス沢山の展望台にはたどり着きたい
時々、足を踏み外したりしながら
近くの木に捕まったりしながら

ふと、後ろを振り返った
いったい、僕はどんな斜面を登っているんだ?
そんな想いで見下ろした道が見えなかった

僕は衝撃を受けた
僕は今、サス沢山を目指していて、そこからは同じルートをたどって降りてくる
「同じルートならば道に迷うリスクが低いだろう」という理由で

このまま、首尾良く登れたとしても、これ降りれるのか?
上りがこれだけ道が見えていないということは、下りも同じ。
登るのもきついが、滑らないよう下半身を踏ん張りながら、降りるのもきつい

登っても降りられない
僕はそこで「勇気ある撤退」を決めて、iPhoneを取り出した

13:11
ここで引き返そう。滑落したら危ない。道も狭いし下りはすごく険しいだろう

僕はiPhoneにこうメモを残している。
冷静だ。ヘタをするとこれが人生最後の言葉になるところだった。


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