« 「魔法」は応援する者それぞれの心の中にある | トップページ | 3人の心が通う「さくらんぼ東根の次が村山ですよ」 »

2023年8月16日 (水)

今となっては貴重な存在「つばさ」のワゴン販売

初めての山形県 鳥中華、山形戦、米沢牛の旅

E3系は普通車のシートも 2+2の4人掛け。
予約しておいたのは、進行方向左窓側D席。
東京発新庄行き列車であり、既に東京から山形を目指す人たちが多数乗り込んでいる。
「すみません」
となりのC席に座っていた青年ビジネスマンに、声を掛ける。
彼は座席前のテーブルにびっしり資料を広げている。
「え゛ここで乗ってくるの?」という心の声を漏らしながら、面倒くさそうに資料を束ねて掴み、通路にはける。
2人を仕切る肘掛は跳ね上げられていて、その分、座りやすかったが、その後、彼と僕との境界線は曖昧なものになった。


山形新幹線は日本初の「ミニ新幹線」 ダイヤ名称は「つばさ」
これまで、僕のなかでは二次元の情報だった山形新幹線が、ようやく三次元の現実になった。

■山形新幹線の歴史
1988年8月
奥羽本線(在来線) 福島-新庄間の改軌工事が始まる
1992年7月
山形新幹線(福島-山形)開業 400系6両編成で運行
1999年12月
山形-新庄間開通 E3系1000番台が2代目つばさとして運用に就いた
2010年
400系が引退


座席に着くとすぐ、後ろからワゴン販売が来た。
ようやく、荷物の定位置を決めたばかりの僕は、心の準備ができていなかかった。
呼び止めようかと想ったが、誰にも呼び止められずに進むワゴンとの間には、既に大声が必要な距離ができていた。

11:06
15分ほどで、先ほどのワゴンが前方から戻って来た。
今度は、満を持して呼び止める。
「すみません。アイスコーヒーあるんですか?」
資料を凝視していたC席の青年が驚いて顔を上げる。
「微糖だけなんです」
アテンダントが、スクイーズボトルの缶コーヒーをワゴンからつまみ上げる。
「あぁそういうのなんですね、すいません」
彼女はブラックコーヒーがないことを済まなそうにしていたが、新幹線ワゴンのコーヒーと言えば、ドリップの紙コップ入りと相場は決まっている。時間を取ってすまなかったが、そのまま行ってもらった。

東海道新幹線の車内販売、駅販売を取り扱うジェイアール東海パッセンジャーズでは、ワゴン販売担当者のことを「パーサー」と呼ぶが、JR東日本管内の日本レストランエンタプライズ(NRE)では「アテンダント」という。

2007年3月、腕利きのパーサーだった徳渕真利子さんの著書「新幹線ガール」が出版され、その後、テレビドラマ化された。
2010年、NRE(日本レストランエンタプライズ*)のカリスマ・アテンダント茂木久美子さんを取材した「つばさアテンダント驚きの車販テク-3秒で売る山形新幹線の女子力-」が出版された。
*NREは2020年にJR東日本フーズに屋号変更。現在はJR東日本クロスステーションとなっている。

この2冊はいずれも、新幹線ワゴン販売ファンとしては、たまらない内容の好著だ。
2023年10月で東海道新幹線のワゴン販売は(グリーン車を除いて)終了する。
JR東日本管内の「はやぶさ」「はやて」「やまびこ」は2023年3月15日迄で終了している。
「つばさ」のワゴン販売は、これから先どうなるのか注目していきたい。


C席の青年の資料が僕のテーブルにはみ出している。それに気づかないくらい、彼は数字に夢中なのだ。
時折、心の声を外に漏らしながら、何やら必死に書き込んでいる。
なぜ、パソコンではなく、紙なのだろう。
「やっぱり紙じゃないと気分が出ない」のは、僕よりも上の世代だ。これから、そういう世代の人を説得にいくのだろうか?
肘掛けが跳ね上げられているため、時々、彼の肘打ちが入る。
ただ、それほど、嫌な感じがしない。
「やまびこ」で、30分間、携帯通話を聞かされたばかりというのもあるが、難しそうに数字をにらんでいる姿に、かつての自分を見ていたのかもしれない。

11:16
緑が近い 新幹線に乗っているのを忘れる
山形新幹線は、福島を出て板谷峠から車内の空気が山形ローカル色に変わる。
しばらく、その車窓を眺めていると、自分が在来線に乗っているような錯覚を覚えた。
グランドレベル、つまり、高架ではない所を走っているせいなのだろう。
実際のところ、在来線でもある奥羽本線上を走っているのだから、景色が在来線然としているのは当たり前なのだが。

初めての山形県 鳥中華、山形戦、米沢牛の旅
motoの旅日記ブログもくじ

| |

« 「魔法」は応援する者それぞれの心の中にある | トップページ | 3人の心が通う「さくらんぼ東根の次が村山ですよ」 »

旅行・地域」カテゴリの記事