タイムリミットを巡る葛藤 元春classicのアンコール
佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑪
20:33
【アンコール1】
元春はギターを首に掛けて戻ってきた。今日はずっと笑っている。
デビュー当時から使っている1973年製の赤いストラトキャスター(買い換えていなければ)
「今、何処ツアー2023」のアンコールは、ほぼ固定されてきたが、前の会場(東京国際フォーラム)では初めて「SOME DAY」が織り込まれた。
果たして「デビューの地」横浜で、彼は何をぶちあげて来るだろう?
僕の予想は「悲しきRADIO」(Heartbeat)だが・・・
□彼女はデリケート|NO DAMAGE
会場が大きく弾けた。
拍手>大歓声>弾けて飛び跳ねる
観客の反応は正直で、前奏が始まった時の反応でその曲への共感・支持・感動がわかる。
この曲もその一つだが「元春classic」には得体の知れない力がある。
その力が大きすぎて、2010年代以降、新しい曲が霞みがちだった。
もしかすると、アルバム「今、何処」をあまり聴きこんでいない人の中には、退屈を感じた人がいたのかも知れない。
それでも、新譜をじっくり楽しんだ後で「元春classic」だけのアンコールという「今、何処ツアー」の演目進行は、会場の空気を掴む意味で功を奏していたと想う。
□スウィート16|SWEET16
MANIJUツアー(日本青年館)でこの曲をやった時、双眼鏡で足下をみると元春は遠目からは視認が難しい小刻みで激しいステップを踏んでいた。
履いていたのは"オランダの木靴のように"つま先と踵が丸いソールのロッカーボトムシューズ(コンフォートシューズ)
今日の靴はフラットソール。ステップは控えめにみえた。
「僕、死ぬまで18歳だと思ってますから」
鳥越俊太郎の対談集「僕らの音楽-対談集-1」 エムオンエンターテイメント (2005/8/10)で元春はこう語っている。
「自分の創作を体で表現することで、16歳にもなれるし、68歳にもなれる(中略)だから、年齢というのは自分にとっては正直に言ってあんまり意味のないことですね」
2023年、67歳になった元春は、とてもその年齢に見えない。
2023年が明けた時「紅白歌合戦」について、数人の知人がメールをくれた。
「佐野元春カッコイイですね」
「佐野元春イケメンやねぇ」
「レッツゴーでご飯が三杯いけます」
僕は自分のことのように嬉しかった。こんな風に元春ファンではない誰かが元春について連絡をくれるということは、これまでなかったからだ。
確かに元春はカッコイイ。今日も限られた行動範囲の中で堅実なカッコイイ動きを見せている。
年寄り臭さなんて、これっぽっちもない。
THE COYOTE BAND以降の楽曲中心ということもあり「声が出ていない」問題も感じない。
20:43
1度めのアンコールを終え、メンバー達は左袖に捌ける
20:44
でも、すぐに戻ってくる。会場のタイムリミットまであと16分。
□約束の橋|ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
家に居る時を除いて、こんなに静かに身じろぎもせずに聴く「約束の橋」は初めてだ。
この曲は弾けたい。少なくとも僕らはそういう世代だ。
「立見禁止」ではあるが、手を上げるくらいはできる。
それでも僕は、椅子に腰を深く沈めた姿勢を崩せなかった。
恐らく「誰か友達と来た時」との違いだろう。
ネジを一本飛ばすには、少し用心深くなり過ぎていた。
これが、ライブを終えて正体不明の沈んだ気持ちに襲われた原因だったのだろう。ライブから2週間が経った時、ここだけは後悔の気持ちがあった。
□アンジェリーナ|Back to the street
元春は神奈川県民ホールに言及する。
「(デビューした町の好きなホールなのに)このツアーにスケジュールされていなくて、なぜ入っていないの?と言ったんだ」
「残念ながらホールは(老朽化のため2025年3月末で)休館するらしいけど、が再開したらまたここでみんなと集まりたい」
「横浜のみんなと一緒に歌いたい曲がある。だったらもっと早くやれよって?」
自分で言って自分でつっこむ元春は健在^^)
東京国際フォーラムでこのツアー初めて演奏した「SOME DAY」があるのか?は、ここに居る誰もの関心事。
バスドラム三発のカウントが入るか・・と耳を澄ませた時
始まったのは「赤い靴」があった街でのデビュー曲だった。
1980年のデビュー作「Back to the street」のアルバム・ジャケット
元春ポートレートが撮影されたのが神奈川県民ホールの裏手にあった「赤い靴」前。
「赤い靴」は、1996年2月、区画整理の為に移転。現在は「ヨコハマ猫の美術館」という店名で同市中区山手町にて営業を続けている。
*参考文献「Moto's Web Server」赤い靴
そういえば、この曲の大団円はダディ柴田のホーンセクション。今日は藤田顕が重厚なギターをかき鳴らす。知らない人が聴けばこういう曲だと想うはずだ。
次回【最終話】
【このお話の目次】Apple Musicでしっかり予習して臨む 佐野元春 今、何処 TOUR 2023
→ど素人!佐野元春講座
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